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ローガン・ラッキーのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ローガン・ラッキー(2017年製作の映画)
4.6
引退を撤回して舞い戻ったスティーブン・ソダーバーグの快作。なにかと「オーシャンズ」シリーズと比較されるが、それは監督本人も認めるまさに地味にしたバージョンが「ローガン・ラッキー」である。評価の前に余談だが、ソダーバーグ監督作は好き嫌いがとにかくハッキリする。それは日本でもあることだが、ソダーバーグは映画監督として視覚的な工夫ではなく巧みな台詞回しをどう名優で活かせるかというまさに演出が抜群で、その痛快さを上手く機能させる面では天才的だ。と言いつつも本作がすべて痛快にされたわけではなく、むしろ散りばめられたメッセージが実に滑稽で面白おかしく無駄がない。変わらずの名優を活かす点でも当て書きされたダニエル・クレイグはじめ他キャストの見事な競演は素晴らしいに尽きる。それでいてストーリーはシンプル。ローガン一家の呪いを飛ばす、一世一代の強盗大作戦はそれこそ昔の犯罪映画を彷彿とさせる。さながら「スティング」のゴンドーフとフッカーをふと思い出してしまう、ローガン兄弟の微笑ましい姿とキャラクターの持ち味がいい。こちらはチャニング・テイタムとカイロ・レンで忙しいアダム・ドライバーの堕落からの輝きを見せる上質な描写が飽きさせない。結果ソダーバーグ監督作のなかでも群を抜いて面白いなと思える仕上がり。それでもってこの映画、全く派手じゃないのに目が離せない。実に映画的な作品だ。
ダニエル・クレイグが終始楽しそうなのも大きな功績。声違いすぎて到底英国紳士とは思えない、髪の毛脱色させてしまうほどのプロ魂を見た。
総評としてウェス・アンダーソンと昔のキューブリックをふっと思い出してしまうくらい、ニヤリとする犯罪映画の良き部分をかき集めた「ローガン・ラッキー」は清々しい映画。ちなみに僕が比較として出した「スティング」は生涯ベスト20に入れてる大好きな映画。まだ埋まってないけど、うずれ埋まるんだろうなと。
もちろん本作もソダーバーグ初見にもかなりいい出来。
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