磔刑

ローガン・ラッキーの磔刑のレビュー・感想・評価

ローガン・ラッキー(2017年製作の映画)
4.3
「ファンタスティックな英國諜報員がマーベルなフォースを覚醒させたりしない犯罪劇」

作戦決行までは中々モッタリしたテンポで進むが、いざ強盗パートになれば前半の伏線を綺麗に回収していくので観ていて気持ちいい。それでも全体的にスローペースで野暮ったいのが目につく。しかし、物語全体を綺麗に収束させているのを差し引きすればお釣りが来るレベルだろう。
大掛かりな作戦を個々の超人的な力ではなく、デコボコながらも一致団結しチームワークで解決する姿には好感が持てる。クライム・サスペンスにありがちな別の問題を引き起こし、話をややこしくする根っからのクズ野郎や、暗い過去とかトラウマ、裏切りといった負の要素が少ない。それに、限りなくハッピー・エンドに近い形で終わるので後味も非常にスッキリしている。昨今には珍しいくらい終始カラッとした印象の見やすく、人に勧めやすい(特に日頃映画を観ないような人には)ソダーバーグ版『スティング』って感じである。

人気シリーズ映画のメインキャストが勢ぞろいしており、同監督の代表作の1つである『オーシャンズ11』とキャストが豪華である点では似ている。個人的にはキャストに頼らず、脚本で勝負しているこちらの方が好みである。
それに『オーシャンズ11』よりも好印象に感じるのは犯罪をキャストをカッコよく見せる為の道具にしていないからだ。セレブ然としてた気取ったスーパースターが暇つぶしに強盗する姿は少なからず鼻につく。

冷静な目で見ればクライム・サスペンスってどれだけ綺麗事並べても犯罪には変わりないのだが、それをいかに心地よく鑑賞者に飲み込んでもらう(共感してもらう)かが重要だ。『ベイビー・ドライバー』は主人公の目的(犯罪組織からの脱却)と不本意な筈だが何故かノリノリな強盗劇が常に平行線で交わらなかった為、飲み込みにくかった。それとは違い、本作は犯罪の成功とサクセスストーリー(貧困からの脱却)を直接結びつけているので違和感なく見れた。勿論人から盗んだ金で幸せになって「良かったね」ってそんな性根の腐った考えがまかり通るワケないのだが、あくまで“フィクションとしての記号的成功”としては綺麗に収まっていると思う(『ベイビー・ドライバー』は変に扱いきれないジレンマの要素を入れるからバランスが壊れてしまった。)
ただ、犯罪の下準備とそれが上手くハマる姿や、チーム内でのイザコザだったり、なんやかんや言いいながらも作戦が成功するのは観ていて楽しくさせられるが、人間ドラマとしては特に心が動かされる要素はない。『カントリー・ロード』も特段上手く作用してないように思えた。(アレよりはマシですけどね、アレよりは)

一度監督業を廃業したソダーバーグ監督だが、ブランクが数年あるカムバック作品にしては十分な出来だろう。しかし、全体のテンポの悪さを見るとまだ本調子じゃないのかなと思ってしまうので、次作に更なる期待を寄せたい。
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