Akiyoshi

君の膵臓をたべたいのAkiyoshiのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
4.3
「僕にないものばかりで
出来上がった君だから
君の全部がほしくたって
いけないことなどないでしょう?」

「神様もきっとびっくり
人ってお前みたいにできてない
今世紀最大の突然変異ってくらいに
お前は美しい」

「満点の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜
悲しみが悲しみで終わると疑わぬように
神様は僕に夢を見させた」

「君を見つけ出した時の感情が
今も骨の髄まで動かしてんだ
眩しすぎて閉じた瞳の残像が
今もそこで明日に手を振ってんだ」

みたいなRADWIMPSの曲を実写化したかのようなエモさと、ラブストーリーと王道の感動系を超越したドラマチックな作品だった。超泣いた。男1人で観に行って超、泣いた…。来年にはアニメ映画化されるらしいからその時の主題歌はRADWIMPSに任せて欲しい。

昨今様々なものが認知され、違和感が無くなってきた中でも「君の膵臓をたべたい」というタイトルは一際、インパクトがあった。しかし、このタイトルに負けない素晴らしさと隠された意味は涙腺を崩壊させるには十分すぎる破壊力が本編にはある。

主人公は高校生の男女。だからといって、昨今大量生産されている美男美女ドラマではない。人間関係を取り結ぶことが苦手な男子高校生(北村匠海)と、屈託ない笑顔で誰とでも仲良くすることのできる女子高生(浜辺美波)。この2人を中心としたドラマがストーリーの軸となって、他者との距離感で悩んでいるすべての世代、すべての日本人に染み入る物語が展開される。

現代日本を生きる多くの若者たちは、他者との距離感をどう取ったらいいかで悩んでいる。しかし、そんなことに悩んでいることを他人に知られたくはない。だから気取った言い回し、屈託のない笑顔を振りまき、陽気に振る舞うことが求められる。

本作に出てくる2人の高校生は人間関係において真逆の関係性をとる。距離感の取り方も同様である。デジタルに侵略された社会での人との付き合い方においての「めんどくささ」が浮き彫りになり、若者たちがこのような悩みを抱える社会になってしまったんだなあと改めて思い知る。そこが若者に共感されるポイントの1つになっているんだろう。

表情が豊かな若者とポーカーフェイスの若者。それぞれの内側にある心の機敏な変化を描き出し、人間関係を通じて悩みを打ち出す。そして重なり合う内面が美しい映像として胸に響く。

2時間で時間軸を行き来することもあり、作品を通して出ずっぱりなキャラクターはいない。しかし、一人ひとりに滲み出てくるような人間らしさがあって、誰も憎むことができなくて、それが役者さんのお芝居を通して観る人に伝わる。時間の行き来が激しい分、想像力を働かせる必要があったり、噛み砕くのに体力が必要となるかもしれない。でも、だからこそ刺さるのだと思います。決してストーリー自体は難解ではないし、しっかりと受け止められ、投げ返すこともできる内容。感動も青春も恋愛も全部まんべんなくうまい具合に入ったボリュームのある傑作になっているのが、これまた凄い。

キャストにおいても天才的な人選で、小栗旬は一流俳優としての風格がプンプン出ているし、やっぱりこういう役が合っているんじゃないかと思う。目立たないのに、目立つ。ギャグのない小栗旬を久しぶりに見たいんだと思っていた矢先のこのような役だったので、彼の俳優としての魅力が一際目立ったように見えた。

特に素晴らしかったのは、「浜辺美波」。圧巻だった。特に小悪魔感と天真爛漫さはテンプレート的なものではなく、どこか芯がありつつも時折見せる弱い部分は演技とは思えないくらい生々しかった。生きているという強さ、死に直面しているという弱さが両立している役をここまで自然体として見せることができるのか、という凄味が彼女にはあった。これからの活躍に期待大である。

最後に主題歌であるミスチルのhimawariの歌詞を……


優しさの死に化粧で
笑ってるように見せてる
君の覚悟が分かりすぎるから
僕はそっと手を振るだけ

「ありがとう」も「さよなら」も僕らにはもういらない
「全部嘘だよ」そう言って笑う君を
まだ期待してるから

いつも
透き通るほど真っ直ぐに
明日へ漕ぎだす君がいる
眩しくて 綺麗で 苦しくなる
暗がりで咲いてるひまわり
嵐が去ったあとの陽だまり
そんな君に僕は恋してた

想い出の角砂糖を
涙が溶かしちゃわぬように
僕の命と共に尽きるように
ちょっとずつ舐めて生きるから

だけど
何故だろう 怖いもの見たさで
愛に彷徨う僕もいる
君のいない世界って
どんな色をしてたろう?
違う誰かの肌触り
格好つけたり はにかんだり
そんな僕が果たしているんだろうか?

諦めること
妥協すること
誰かにあわせて生きること
考えてる風でいて
実はそんなに深く考えていやしないこと
思いを飲み込む美学と
自分を言いくるめて
実際は面倒臭いことから逃げるようにして
邪(よこしま)にただ生きている

だから
透き通るほど真っ直ぐに
明日へ漕ぎだす君をみて
眩しくて 綺麗で 苦しくなる
暗がりで咲いてるひまわり
嵐が去ったあとの陽だまり
そんな君に僕は恋してた
そんな君を僕は ずっと



主題歌がミスチルで良かった。
Akiyoshi

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