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君の膵臓をたべたいの小のレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
3.8
百年残る作品を創りたいという夢と、今売れなければならないという現実ーー。そんな監督の葛藤を妄想し、ちょっとジーンとしてしまった。

北村匠海君演じる学生時代の「僕」、彼の演技が最高に良かった。ヒロインの桜良に対する気持ちを表情の微妙な動きや間の取り方だけで見事に表現し続け、クライマックスの「すいません、泣いてもいいですか」へ。

抑えてきた桜良に対する感情が爆発するその瞬間、そして他者と交わらず自己完結することで自分の世界を守ってきた「僕」が、大きく成長したことを感じずにはいられないその瞬間。

この瞬間のためにそれまでの時間があったといっても過言ではないくらいの、個人的映画史に残る名シーン。北村匠海、すげーイイじゃん。月川翔監督、やるなっ、と思った。

それが何故?な、大人パート。鑑賞直後、「あれ余計じゃね?」と強く思った。だって、あの大人のキャラクター、成長前の「僕」にリセットされてるじゃないの。学生時代の「僕」を見事に描いた監督がこんな辻褄のあわないことをするなんて、考えられない。

想像するに製作委員会とかで、大物俳優をキャスティングせよとの縛りがあったのだろうと。シネコン向け映画売るのに小栗旬、北川景子の起用は当然でしょ、と。それに主演は東宝シンデレラのニュージェネだぞ、渋谷とか新宿の単館で上映するのとわけが違うんだぞ、と。

それから、映画好きのオジサンと話し合ったことなんだけれど、製作委員会での妄想シーンとして「オチは去年大ヒットしたアレみたいなヤツでキマリね」的なやり取りがあったんじゃね?と。

かくして、あの大人パートが創作されたのではないかと思っていたところ、監督と出演者4人のインタビュー記事を目にした。
(http://natalie.mu/eiga/pp/kimisui)

小栗旬さんの話によれば、大人になったヒロインの友達と僕との手紙のシーンで、監督は泣いてカットをかけ忘れ、振り絞って出した「カット!」の後で、「これはいい映画になる」と両手でガッツポーズをとったという。

冷静に考えれば、敢えてカットをしなかったとも思うけれど、本意ではないであろう大人パートに対する監督の、自分のやれることはやりつくしたという、複雑な心情が表れているように思い込み、ちょっとウルっと。

この斜め45度の妄想が単なる妄想なのかどうなのか、2018年公開予定のアニメ版を見て確かめたい気持ちが膨らんできた。実写に比べキャスティングの制約が小さいアニメなら、大人パートはないと予想する。個人的には学生時代の「僕」を誰が、どのように演じるのかも注目点。

●物語(50%×3.5):1.75
・良い映画とお客さんを呼べる映画は違う的な大人の事情が見えたのは幻かしら。ちなみに原作は未読。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・北村匠海君が抜群に良かった。彼の演技のおかげで、彼女とのシーンがスリリングだった。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・桜の映像とかキレイ。
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