えんさん

ブレア・ウィッチのえんさんのレビュー・感想・評価

ブレア・ウィッチ(2016年製作の映画)
3.0
20年前、”ブレアの魔女”をテーマにドキュメンタリー製作のため、ブラック・ヒルズの森に踏み込んで消息をたったヘザー。20年経ち、失踪時は幼かったヘザーの弟ジェームズは、YouTubeで偶然姉らしき人物の映った映像を発見する。姉を救い、“ブレアの魔女”の謎を解くため、ドローンなどの最新設備と、森に詳しい若者たちを連れ、彼と仲間たちは森に踏み込んでいくが。。。世界中で大ブームを巻き起こしたホラー映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の正統な続編。監督は、「ザ・ゲスト」のアダム・ウィンガード。

「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」が公開されたのが、1999年。当時、大学生だった僕は金沢のルネス9シネマ(現、ユナイテッド・シネマ金沢)の7番スクリーンで観たことを覚えているくらい、なぜか記憶に残っている作品でもあります。6万ドルという低予算で作られたインディペンデント映画でありながら、全米だけで1億5千万ドル弱、全世界でも2億5千万ドル弱の興業収入を獲得した作品。当時、観たときは手持ちカメラで撮られた映像で非常に酔ってしまうのですが、印象的でかつ後の映画でもパロディでも用いられたヘザーのアップでの唐突な終わり方など、リアリティ溢れる展開は見ものでした。あと印象的だったのが、インターネットやテレビなどのメディアを効果的に使った宣伝方法。脚本もある劇映画なのですが、実際に起こった出来事(映画の設定上は、失踪した3人の学生たちが残した映像の上映という形をとっている)のように効果的にミスリードさせる宣伝方法もなかなかでした。アメリカだけでなく、日本でも一時期はブームを作っていたように思います。

前作がこのように映画の内容としても、映画文化としても、一石を投じた作品なだけに、パロディ作を中心に様々な亜流作品が作られたのですが、本作が正式な続編作品。映画の設定上では20年、映画作品としては18年ほど経ってのこの続編は、主人公が弟のジェームズとなったものの、森の中に再び行き、彼らが持ち込んだカメラによる映像で構成されるという設定は同じ。しかし、手持ちカメラはビデオカメラながら、メモリカード録画のものに変わり、スマートフォンなり、ドローンなりと格段に進化した装備が登場してきますが、心理的にも、魔女が住むと言われる森の不思議な魔力に押しつぶされていく様はなかなか。特に、ラストのラスティン・パーの館での主観カメラによる迷走シーンは怖いの一言。特に、ビクッと脅かすような演出はないのですが、館に迷い込んだ彼らのパニックさがそのまま観ているコチラに伝わってくるのです。これは恐ろしい。。

他にもホラー映画としてはかなりレベルの高い怖さは出ているのはなかなかなのですが、僕が観終わるまで、ずーっと謎に思ってしまったのはドローンなり、スマフォなり、各個人が持っていたカメラの映像を誰が編集したのか、、、ということ。前作は森に迷い込み、そのまま失踪してしまった学生たちのカメラ映像そのまま再生しているという注釈説明があったのですが、本作はいろんな視点のカメラ映像が登場し、それらは全て映画の中でのガジェット(道具)で撮られたものではありそうなのでが、逃げ惑った彼らのガジェットを一体全体どう回収し、何のために編集し、何のために上映しているんだろうと。。そう、この映画は映像のリアリティという面だけ抜き取り、前作で重要だった実際にあったようなことというドキュメンタリ的な要素が全く欠如した、ただ単に面白い普通のホラー映画になってしまっているのです。