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LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門のsatoshiのレビュー・感想・評価

4.2
 『峰不二子という女』から始まった『LUPIN THE ⅢRD』シリーズ。その3作目(劇場版としては2作目)。よく知られている『ルパン三世』のイメージに囚われず、原作漫画が持つハードでアダルトな作風、そして『ルパン』シリーズ屈指のハイクオリティなアニメーションで人気を博しています。本シリーズはそれぞれ各キャラクターに焦点が当てられ、今作では十三代石川五エ門に焦点が当てられています。私はもちろんシリーズは観ていて、今作も観なきゃなぁとずっと思っていたのですが、ズルズルと引き延ばし、最近、ようやっとNetflixで鑑賞しました。

 結果、めちゃくちゃ面白かったです。前作とはスタッフは同じなのですが、作品へのアプローチが異なっているなぁと思っています。というのも、前作『次元大介の墓標』は次元大介がルパンの相棒となるまでを軸にし、「次元大介」というカッコよさの塊のようなキャラの魅力を余すことなく見せつけた作品でした。

 替わって本作で描かれるのは、五エ門の剣客としての覚醒です。自信過剰の象徴だった「豪華な斬鉄剣」が我々が知る斬鉄剣になるまでの話です。本作は他の要素を極力排し、ストイックにこれを描くことに注力しています。なので、本作の敵も、背後関係は匂わせる程度でとどまり、キャラはほとんど掘り下げられません。純粋にルパンたちを追うターミネーターとして活躍します。故にストーリーは前作よりも薄くなってしまったかもしれませんが、これはこれでストイックに「強さ」を追い求める五エ門の作品らしいと思います。

 また、今作はやはりアニメーションが素晴らしすぎます。グリグリ動くキャラや、背景、車や銃といった小物のディティール、そして決まりに決まりきったカットの連続等、見ているだけで至福の時を過ごせます。

 これだけなら前作にもあった要素です。しかし、今作では、前作ではあまり描かれなかった「武器を用いた戦い」を前面に押し出しています。斬鉄剣の殺陣はもちろん、金棒だ分銅鎖だ斧だと、銃とは違い、動きがよく出る武器ばかり使っています。それを上述のようなグリグリ動くアニメーションでやっているのです。だから戦いにバリエーションが出て、それを見ているだけで楽しい。でも少し痛い。肝心の殺陣はもちろん最高で、覚醒後に起こる50人斬りは圧巻の一言。豆腐みたいにサクサク切れますから。

 後、それ以外のアクションでは、カーチェイスのシークエンスが最高でした。もちろんガンアクションもあり、個人的には銭形がすれ違いざまに連射するシーンが好き。このように、今作は全体的にアクション寄りになっていると思います。

 以上のように、確かにストーリーは薄くなったかもしれませんが、アクションは本当に素晴らしいです。そして、このストイックさも強さを追い求める「石川五エ門」というキャラに非常に合っていて、「五エ門のスピン・オフ」としては最高だと思います。これでもし、銭形編をやって人気が出たら、このスタッフでスピン・オフでない『ルパン三世』を作ってもらいたいと心から思っています。
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