うめ

こころに剣士をのうめのレビュー・感想・評価

こころに剣士を(2015年製作の映画)
4.0
静かに呼吸し
剣を合わせる時

苦しい生活
辛い過去

全ては頭から消え去り
見えるものは相手だけになる

そして
身体は
勝手に動き出す
何度も繰り返した突きを



1950年代、エストニア。
エンデル・ネリスは身を隠す為に、ハープサルへやってくる。
教師になったものの苦手な子供。
しかし、フェンシングを教え始めた事で少しずつ溶けていくお互いの距離。
そんな時、生徒が見つける大会の出場募集。
場所はレニングラード。
行けば、もう帰れないかもしれない…


実話がベース。
ドイツとソ連に挟まれたエストニア。
大国同士の戦争に巻き込まれる小国の人達。
それは子供も例外ではない。
悲しさを背負いつつも…
一つの事に打ち込む子供達の姿、はにかむような笑顔に涙が溢れる。

戦争は終わったように見えても、終わってはいない。
生きている限り。
生徒の為に、全てを失う危険に向き合ったエンデルの勇気に熱くなる。

素朴な役者達。
冷たくも穏やかな景色。
ぴんと張り詰めるようなレッスン。
静かに響きわたるピアノの旋律。

悲惨な現実の中にも、子供というかけがえのない希望は残されていた。
立ち上がる逞しさとそっと寄り添ってくれるような優しさを感じる作品でした。
うめ

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