人はなぜ音楽を求めるのか…の原点に立ち返らせてくれる映画だった。
この映画は、予告編や人のレビューを見ると、「内容想像できるし観なくてもいいかな」という気持ちにさせられるけれど、観ないと伝わらない強度を備えていた。
若くして頂点に上り詰めたチェリストのヨーヨー・マが、シルクロードプロジェクトなるものをはじめたのは1998年。そのプロジェクトを追いかけたドキュメンタリーがこの映画。
当時、私はプロジェクトのCDを買ったが、出て来る音をあまり理解できなくて、ヨーヨー・マが頂点で目標を見失って次を模索しているんだろうなあ…アイデンティティにまつわる苦悩もありそうだし…くらいの感想をもっただけだった。
それは、そのとおりだったのだけれども、その詳細を映画で知ることで、想像以上にその世界に共感した。
彼、ナミビアの原住民の儀式で音楽の生まれ出づる場所を目の当たりにしてブレイクスルーが起こったそうだ。
そういう強度のある体験をしていない我々も、映画を観ていくことで、彼や他メンバーのブレイクスルーを追体験できるようになっている。
そして、表現の世界というのはもっと自由なはずだという気持ちにさせられた。
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映画を観ていて、15年前ほど前に、パリ在住のドイツ人に
「なんで日本にクラシック音楽を演奏する人がそんなに多いの?ヨーロッパの伝統音楽の1つでしかないのに極東の国でそこまで愛されているのがstrange/funnyだ」
と言われたことを思い出した。
蔑視的なニュアンスにやや反発を覚えながらも、回答自体は簡単だった。
今回それを思い出したのは、映画を通じて、彼の感じた違和感に少し共感が芽生えたからかも。
でもそれはネガティブな意味ではなく。
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音楽が好き、特に自分のしている活動に違和感を感じたことがある人には強く心に響いてくる映画だと思った。
かなりオススメです。