オトマイム

満月の夜のオトマイムのレビュー・感想・評価

満月の夜(1984年製作の映画)
4.3
ロメール作品に出演する女優たちはちょっと雰囲気が似たところがあって、主演をあちらとこちらで取り替えてもいける、と思えたりする。(もちろん皆さん魅力的ですよ!)

だけど本作のパスカル・オジェは別。この役は彼女でなければならないと思わせるとくべつの存在感、雰囲気がある。(もうひとつ挙げるなら『コレクションする女』のアイデ・ポリトフも)

幾人もの男性たちに愛されながら自分は人を心から愛することができず、行き場を自分から潰してしまう女性。そんな、地に足が着いていないふわふわとした孤独な女性の役が彼女にぴったりだった。

清純さと妖艶さが同居する独特の雰囲気、どんな奇抜な髪型やファッションも品良く自分のものにしてしまう個性、そしてとりわけ少女のような声が素晴らしく魅力的!
モンドリアンのリトグラフを配したスタイリッシュで無機質な空間、彼女はそこに迷い込んだ猫のようだ。

本作品に出演した直後に心臓発作で急逝してしまったオジェ。そんなこともあって本作をみる度に少し悲しくなる。

「喜劇と格言劇」第4作