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満月の夜のcyphのレビュー・感想・評価

満月の夜(1984年製作の映画)
4.7
2018年冬オールナイトでうとうと観て以来だったけどこの4年の間にすっかり自分ごとになっちゃって…ほろり て感じだった 当時は束縛を嫌うルイーズに対して同情的、そういうスタイルもあるのにね みたいな気持ちで観ていた気もするけど、いま観たらルイーズが完全にハラスメント加害者、ダブルスタンダードで恋人を苦しめてその状態を満足としているいちばん交際したくないタイプの恋人だった 大した覚悟もなく猛獣をペットにして自己演出してるようなもの 猛獣側もなんでわざわざ自分をペットに選ぶんだろうって苦しかっただろうし(「愛していないなら他に何を望む?」)、なにひとつ与えられずただ空々しい(でも本心から出てくる)愛の言葉だけで束縛され続けるのは悲しかっただろう

ということでレミという人物に好意を持つのは難しいように描かれてるはものの、ラストの怒涛のシーンにはやはり胸のすくものがあった 絵の完成度も相まって全身が総毛立つ、ロメール屈指の名シーン ルイーズ視点では突然失った、となるしレミ視点では奪われていたもの(尊厳)がついに取り返されたと言える 「わたしの方がずっと愛してる、愛されてるより愛してる」という泣きじゃくりながらの懇願の虚しさ 「愛してる」の響きだけじゃこんなにも無力なんだね 超わかる、最高

その他→ロメール三大あるある
①アンビバレント浮気性(「レミを愛してるからこそ他の男に誘惑を感じるのよ」)
②ワンチャン狙い続ける非モテ男(オクターブ)と辛抱強く断り続ける美女との滑稽な友情
③やはり絶妙にださいダンスパーティー
がてんこ盛りでとてもよかった ある日結婚しようと思い立ったロメールはその週末市役所のダンスパーティーへ単身繰り出し見事生涯の伴侶を見つけ出した、という話を読んでからロメール作品のダンスシーンがより味わい深い



2018.2.17 新文芸坐オールナイトにて
2つの家を行き来する行為が愛と生活を橋渡しすることってある、あるよな〜あるある というきもちで観ていた パリの小さな部屋と郊外のモダンな家の対比も冷たい冬の夜の中でそれぞれ光ってていい 眠らない街へ飛び出して知らない人たちと落ち着かないような落ち着き払ったような心地で朝を待つ夜もよかった 愛がそういった時間に宿ることもその夜明けの先に待ち受けるものもちゃんと知ってる、知ってるのを冬のロメールで観れてとてもよかった 最後の朝焼けをまた観たい
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