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笑う故郷の小のレビュー・感想・評価

笑う故郷(2016年製作の映画)
4.0
コメディドラマ。まずまず面白かった。ノーベル賞を受賞した、アルゼンチンの田舎町出身でスペインに住む作家のダニエルが主人公。

社会への反抗心が原動力のダニエルが社会に認められるいうこと、よりによってノーベル賞を受賞するなんてことは作家・ダニエルの終焉ということらしい。じゃあ辞退すればいいじゃんという気がしなくもないけれど、そこはコメディなので…。

ノーベル賞作家になってから5年間、1作も書くことができないでいたダニエルのもとに故郷から名誉市民賞授与の招待状が届く。グローバル基準の価値観を持つ彼は、何事にも濃密な人間関係がかかわってくる故郷が大嫌いで、2度と帰るまいと思っていたが、ふと思い立ったかのように招待を受けることにする。それは一体なぜなのか?

はじめのうちこそ郷土の誇りとばかりに、ダニエルをあたたかく迎えてくれた故郷の人々だったが、次第に彼への妬みや嫉妬があらわになってくる。さらに、彼の元カノを妻にした旧友の家族が、笑いを交えた波乱の展開を引き起こす。

ダニエルは田舎独特の事情を気づかって、自分の主義を曲げるようなことは決してしない。そんな彼への攻撃は、次第に過激さを増していく。しかし、聡明な彼はこうなることがわかっていたからこそ、故郷に帰ったに違いない。

人は何かに行き詰ったとき、故郷に帰り気持ちをリセットしたり、元気をチャージしたりするということがあるのだと思う。ダニエルにとってのそれは故郷で憤怒、憤懣をためること。

社会の周辺を居場所にし、中核に向かってクソだと毒づくことが彼の生きる道だったのに、ノーベル賞によって中核に引きずり込まれ、創作意欲を失ってしまったダニエル。その彼に再び活力を与えてくる場所が、周辺人になれる生まれ故郷だった、と。

人は過去をないことにはできない。過去に目を背ける者は良く生きることはできない。好きか嫌いかにかかわらず、生まれ育った故郷はその人をかたち作っている。だから自分を見失ったとき、故郷に帰りたくない人ほど帰ったほうが良いのかもしれない。

●物語(50%×4.0):2.00
・笑えるけど苦い物語。ダニエルがなかなかの悪人なのがイイ。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・ベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したオスカル・マルチネスの演技、やっぱりいいっす。

●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・普通に良いかな。
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