バートロー

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のバートローのレビュー・感想・評価

5.0
4Kマスター明るくて綺麗だし観やすくなっていて本当に凄い。日本占領時代の名残、中国共産党の脅威、白色テロで厳しい反体制弾圧が横行する不安定な60年代台湾、市井の人の有様を真空パック的に再現したレオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のような作品。ホラーゲームの『返校』も大いに参考した独特の雰囲気と俯瞰したカメラ、家屋、校舎、映画スタジオ、各派閥のヤサ、街の映し方で上映時間の長さを忘れて見入ってしまう。抑圧的な学校、父の挫折と変心、外省人と本省人、仲間との軋轢と離別、思い通りにいかない恋愛、全てが白色テロ時代の台湾とまだ14歳の小四の不安定な心が密接にリンクする。小四と同じ歳で台湾で育ったエドワード・ヤンが何を考えていたのか、4時間の経過の果てに映るゴミ箱のシーンは当時の何もかもを物語たる雄弁なワンパーフェクトショットだ。

『ヤンヤン 夏の想い出』しかりエドワード・ヤン作品はたまに劇場リバイバルがあって嬉しい。『非情城都』と共に日本も無関係ではいられない台湾史を知る上でオススメの名画。