バナバナ

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のバナバナのレビュー・感想・評価

3.5
1961年の台湾で、14歳の子が起こした実際の事件を基に映画化しているそうです。

主人公・小四の父親がなんで投獄されたのかが分からなかったけど(ここは台湾だから文化大革命は関係ないよね)、
観終わった後ググってみると、台湾では長い間赤狩りが行われていて、
正義感の強い小四の父親が、出世頭の親友の不正に恭順しなかった為に、どうやら共産党員の濡れぎぬを着せられて、投獄されてしまったみたいです。

小四の家庭は子沢山だけれども、正義感が強過ぎて融通の利かない父親と元教師の母親という、温かいけどきっちりした家庭に育てられています。
対するヒロインの小明は、小四と同じ外省人の家庭ながら、父親は居ず、母は病弱で住むところもないので、彼女がどうしてこういう選択をしてきたのかは、映画を観ていると分かる様にはなっています。

小四がどうしてこんな事件を起こしたのか。
以前は正義感や威厳があり、理不尽な学校の先生からも庇ってくれた強かった父親が、精神的に崩れてしまい、家庭に重い不安が圧し掛かっている今、
その事は、小四の心にも深く影響を及ぼしていたのでしょう。

本当の小明はそんな女ではない。
彼女がこういう事をするのは、世の中が悪いからだ。
彼女を守れるのは僕だけだ。
…と、父親が変わってしまった今、自分だけは正義を行わなければならないと、小四は自分を追い詰めていったのではないでしょうか。

「小明は、今では僕のことをハニー以上に慕ってくれている」と思っていた小四だけど、
たぶんハニーと小明は同じ様な境遇の家庭に育ってきたでしょうから、真の戦友であり、彼女が本当に恋しかったのは、最後までハニーだけだった様に思います。
だから小明は、ヤリマンの小翠と全く同じ言葉を小四に投げかけたのでしょう。

私が観たのは4時間版ですが、小四の中学での日常生活から小明に惹かれ始める前半部分と、
興行を巡るやくざの出入り部分と、
主人公・小四の父親が投獄されるシーンと、
ほぼ3つのパートからなっています。

さすがにヤクザの出入り部分は、エドワード・ヤンの創作だろうと思うのですが(だって、中学生が巻き込まれる!?)、
ここの部分のライティングが評判が良いようですが、私はハニーの存在は必要だとは思うけど、この部分は話が長くなるので要らないか、短くしてもらいたかった。
だってこのシーンって、小明のハニーに対する気持ちとは関係無くない?

それぞれの複合的な要因が絡まって起こった事件なのに、結局、全体的な印象がヤクザの出入りの部分に持っていかれてしまって、話が混沌としてしまったと感じたのは、私だけでしょうか。
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