milagros

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のmilagrosのレビュー・感想・評価

4.6
3回目でようやく全体像がわかった。エドワード・ヤンはわざと分かりにくくつくってるとしか思えない、世界を描くために、世界の不透明さを、不条理さをそのまま映しているよう。

ビデオでみるよりもずっと暗闇が深くて、音が澄んでいて、より世界が広がった。
電気をパチパチ点けたり消したりするのも、いつも懐中電灯を手放さないのも、少年の、暗闇を照らしたいという純粋な想い、世界を変えたいという無謀で独りよがりだけど、切実な願い。
それを非情なまでに遠くから捉えつづけるカメラは、残酷だけどきちんと寄り添っている。

少年の物語は、家族の物語へ、そして国の物語へと、ごく自然に伝染していく。こうしてクーリンチェは映画それ自体が1つの世界になる。

それにしても、映画内映画のシーンがやたらに多いことに改めて気づく。少年の懐中電灯と同じく、エドワード・ヤンにとっての映画とは、暗闇を照らし世界を映す、一筋の光だったのかもしれない。
milagros

milagros