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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の3104のレビュー・感想・評価

4.6
世事はすべからく「対」である。
光と闇、バランスとアンバランス。
「対」の構造を避けられ得ない事柄もあれば、ものの見方で「対」になるものもある。
戦前と戦後、本省人と外省人、存在と不在、男と女、愛情と友情、得るものと失うもの。

片方が濃くなればもう片方は薄くなる、片方が強ければもう片方は弱くなる、片方が重ければもう片方は軽くなる、いやそうとも限らない。片方が濃くなり強くなり重くなれば、もう片方もまた濃くなり強くなり重くなることもあるのだ。光と闇の関係のように。


公開当時に観られず、その後諸般の事情で国内では長らく観られなかったこの作品。待望の、という惹句が全く大袈裟ではない、デジタルリマスターによる再上映。

緻密で清く安らかで残酷な時間。
さりげなく繊細なカメラワーク、丁寧な物語の構築、無駄がなく鋭角な台詞回し、そして何より一切の“間延び”を配し、それでいて“性急さ”を感じさせないカット割り。
そうなのだ、サイズが長い映画の後ろには、こうして必然以上の「何か」が施されていたりするのだ。故にこの3時間56分という長さは特記事項ではない。

しかしこの甘美で複雑な世界への「没入」(最中は画像や文字だけで認識していた〝封印されし〟二十数年に想いを馳せる隙もなく )を解かれた後の気持ちはなんだろう。3時間56分でも足りないと思うほど。観終えた直後はもちろん、数日経っても数週間経っても、ときおりあの場所、あの少年少女達、あの光と闇のコントラストに想いを馳せてしまう。
♪Ah you lonesome tonight~と、プレスリーの「今夜はひとりかい?」のフレーズを脳内でループさせながら。
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