まつこ

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のまつこのレビュー・感想・評価

4.4
埃っぽい台北の街が危うさと煌めきを閉じ込めて「160km/h直球ど真ん中」の感情をぶつけてきたような作品。

鳩尾でなんとか受け止めて、痛さとほろ苦さに唸ったラスト。4時間が振り返るとあっと言う間のように思えた。

とか言いながらも、あまりに日常が続くから、事件がいつ起こるのか、物語の着地がどうなるのか途中ソワソワしたりもした。でも、これを受け止めるにはあの時間が必要だったのだろう。

なかなかの長丁場だけど見届けたらもう一度彼らに会いたくなる。次はちょっと違った視線を向けて。

こんなはずじゃなかったのにが積み重なって。日常が日常でなくなって。ちょっとしたことが歯車を狂わせる。丁寧に観てきたからこそ痛いくらいに伝わる純粋さ故に歪んだ愛。彼が彼を持て余してしまう瞬間。

微笑ましい薄ピンクの恋から、ドロドロの赤紫の愛、爽やかな水色の友情に、憧れ、嫉妬、色んな感情と埃っぽい土色の汗が混ざって描かれる青春のひととき。

真空パックのなかの空気を吸い込んだような気分。

独特の雰囲気を持つ彼女の瑞々しさに惹きつけられたけど、蒼井優ちゃん的な女がキライな女なんだろうなぁ〜なんて思いながら観ていたらやっぱりそんな感じだった。(注:私は蒼井優ちゃん好きですよ!)彼女も彼女でそうならざるを得ない環境なのだろうけど。

柄本 佑がやったら似合いそうなアイツにゾワゾワするくらい苛立った。小四の爽やかさとのギャップが気持ち悪さを際立たせていたように思う。

彼ら以外にも、みんなにちゃんとスポットが当たっていてこの時代の台湾の息遣いが聞こえてきた。

強烈な生と死。

ああ、いい作品を観た。

少年にとっては彼が見える範囲が世界のすべてなんだ。
まつこ

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