Ryosuke

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のRyosukeのレビュー・感想・評価

4.3
人物が多いうえに覚えづらく、説明も少ないので、「悲情城市」見た時と同じ気分になったが、映像が美しいので問題ない。面子と暴力の論理、野蛮で繊細な思春期が描かれる。
家を外から映して、枠の中に人物を収める構図は侯孝賢っぽい。部屋を跨いでカメラが移動する長回しは溝口を感じさせる。上からのショットもあるが、あくまで現実的な視点であり、「神の視点」にはならない。
タイトルでネタバレしてるじゃないかと思ったが、殺す対象をミスリードしてるのね。
アジアでもプレスリー、ロックが反体制の象徴になっている当時の風俗が垣間見れるのも面白い。
ただちょっと四時間は長く感じた。四時間必要なスケール感ではないのではとも思うがどうなんだろう。
重要なシーンでの「見せない」演出が光る。二人の会話のシーンではドアだけを映し続けている演出がされ、バットが振るわれるシーンでは電球のみが映り、ハニーが車の前に突き飛ばされるシーンも山東の表情のみが見せられる。暗闇の襲撃シーンも何をやっているかは不明瞭だし、小馬が問いただされるシーンも小四は映らず、ヒロインが殺されるシーンでも手元は映さず表情を見せる。
光と闇のコントラストが美しく、差し込む太陽光、裸電球、懐中電灯、蝋燭、街頭、部屋の明かりと、とにかく照明が印象に残る。スタジオに扉から差し込む光とシルエットになった二人のショットは美しい。
撮影所で本を落とすシーン、殺された山東と懐中電灯、ブラスバンドの音が鳴りやむことで、際立たせられる重要なダイアログ、讃美歌のシーンと印象的な場面がこれでもかと詰め込まれる。
置き去りにされた懐中電灯のクローズアップが暗い未来を予感させる。
暗闇からバスケットボールが飛び出してきて、笑い声が重なるシーンも不気味で印象深い。(異次元から突然現れたかのよう)
ヒロインは超美人という訳ではないがやはり独特の魅力がある。銃を持ってふざけるシーンが印象的。
父と子が自転車を押しながら歩くシーンは、同型の場面が二度繰り返される演出が上手い。一度目に信念を語るのは父だが、二度目はそれが子どもになっている。二度目は画面が暗くなっていて、決して明るくないその後の展開が暗示される。
クライマックスでは、静かに行われる凶行と、間を空けて背景の人々が徐々に異変に気付き始める様が生々しいリアリズムを醸し出している。
ラストのシークエンス、テープは捨てられ、家族が日常を取り戻し始めている中でラジオの合格者発表の音声に母親の動きが止まる。あり得たかもしれない未来が失われたこと。冷たい質感のラスト。