Iri17

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のIri17のレビュー・感想・評価

5.0
計4時間の長尺の作品ですが、大大大傑作です。意図的に分かりにくく撮影されているので、集中して観る必要があり、集中力のない僕は2回、計8時間を費やして観てしまいました。暇人です。

当時の台湾の閉塞的な社会状況の中で、1人の少年が苦しみ、もがき、恋をして、裏切られて、殺人を犯してしまうまでを描いた作品。
自分のアイデンティティが分からない、仲間などいない、真っ暗闇の人生の中で少年は光を求める。
少年が殺人を犯したのは勿論少年のせいだが、時代のせいでもあり、相手にも原因があり、複雑な要因が絡み合っている。決して原因は一つではない。
そして少年が人を殺したのは必然であると思う。彼は必死に生きようとした。生きようとしたために、あそこであの人物を殺すしかなかったのだと思う。誰が責められようか?あの事件は運命であり、運命が少年を嘲笑った結果なのだ。

エルヴィスを聴いている時だけ、恋をしている時だけ少年は光を感じていたのだと思う。そしてその光に裏切られ、全てを諦めた時、暗黒に飲み込まれてしまった。
どんなに辛くたって、真っ暗闇に1人だって、きっとこの先に光があると信じて生きていかなければならない。それが僕たちが生きていくための唯一の手段だ。例え裏切られても光を求め続けなくてはいけない。

この映画に限ったことではないけれど、映画は人間っていうのは何人だろうと、いつの時代に生まれようと根本的に同じだということを教えてくれる。
嬉しいことがあれば喜ぶし、楽しければ笑うし、悲しくなれば涙も出る。思春期にもなれば恋をするし、エッチなことも考える。孤独を感じ苦しんむ人は世界のどこにでもいる。差別なんて本当に馬鹿げてる。
文化の違いはあっても人間はみんな基本は同じなんだ。そして映画や音楽は国境を超えて寄り添ってくれる。
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