ろ

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のろのレビュー・感想・評価

4.7


「彼に忠告するの。この世界は変えられないと」


あけましておめでとうございます!
年のはじめは「クーリンチェ少年殺人事件」から!
登場人物の多さに「これは、え~っと誰やったっけ?」と混乱しながらも3時間56分の長尺を3回に分けて完走しました~!

気持ちのすれ違いをとても魅力的に描くエドワード・ヤン監督。
クリスチャンの姉と弟の交差しない想い、届かない録音テープ、伝わらない愛。切なさがじわじわきます。


「子どもたちはその成長過程で大人の不安を感じ取り、少年らは徒党を組んだ。脆さを隠し、自分を誇示するかのように・・・」

夜間中学に通うシャオスーは不良グループの友人とつるんでいた。
ある日、シャオミンという少女と知り合うが・・・。

中国から台湾へ移住したシャオスー一家。
安定を求めて来たはずなのに、食料品店のツケはまだ払えない。
日本と8年戦ったのち、日本家屋に住み、日本のうたを聴きながら食卓を囲む。家族7人の背中は小さく映る。
バスとすれ違う何台もの戦車、寒々しい畑で行われる軍事演習。
「もしもわたしが男なら、喜んで兵役に就くわ」


“不良”のレッテルを貼られ、補導室に呼び出されるシャオスーとお父さん。
帰り道、自転車を押しながら、
「間違ってないのに謝るなんて、卑屈でろくでもない人間だ」
「でも社会ではどこにでもある話だよ」
「だからこそ勉強して自分なりの正しい道を探すのさ。信念を信じる勇気がないなら、生きる意味がない。」
「自分の未来を信じろ」という父の言葉がシャオスーの心をとらえた。


夜間部から昼間部を目指すシャオスー。
姉のアドバイスどおり図書館で勉強する日々。
そんな中、ある裏切りが浮上し・・・。

「孤独だと思わないで。わたしはいつも心配している。疑わないで。神があなたに力を与えてくれる。」
「でも運の悪い人が多すぎる。社会は不公平すぎる。」

教会でシャオスーを待つ姉。
一方、いつも前を照らしてくれた懐中電灯は置き去りに、代わりに短刀(日本刀)を手に、シャオスーは街に出る・・・


「戦争と平和」を読んでも平和は手に入らない。
聖歌隊がうたう讃美歌は虚しく響く・・・
ろ