すごい映画。1991年の映画なのに1961年に作られたのではないかというくらい映像に説得力があります。そして、この映画の特徴は「大きな隙間」です。
まず気がつくのが映像の隙間。
ほぼ全編が引き気味のショットで構成されています。全身が入るフルショットがかなり多く、ほとんどが膝から上のニーショット。寄ってもウェストより上のミドルショットです。そのため映像に大きな隙間が生まれます。この大きな映像の隙間の効果は3つあります。
1. 登場人物に共感しにくい
2. 孤独を感じる
3. 客観視を余儀なくされる
次に気づくのが音の隙間です。
この映画では音楽が重要な役割を持ちつつ、極力排除されています。サウンドトラックアルバムなんて作れません。そして、生活音も抑えられています。人がたくさんいる場面でも、あまりガヤガヤしていません。
この映像と音の隙間にチリのように暴力と生活の不安が積もっていきます。4時間近く時間をかけて。台湾に残された日本家屋を舞台にしているため、一見すると昔の小津安二郎や成瀬巳喜男の家族ドラマの雰囲気があります。
しかし、穏やかな風景の中で起きている出来事は愚連隊の闘争や警察の赤狩りです。それに対して安易な共感を許しません。
これだけ映像と音楽の不在を効果的に使った映画もなかなかないですよ。