MasaichiYaguchi

羊の木のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
4.0
2014年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞の山上たつひこ原作、いがらしみきお作画の同名コミックを「紙の月」の吉田大八監督が錦戸亮さんを主演で映画化した本作は、罪と贖い、性善説と性悪説を、伝承と風土が色濃く残る寂れた地方の港町を舞台にしたドラマで我々に問い掛ける。
映画で印象的な絵柄で登場するタイトルの「羊の木」は、コロンブス時代、欧州の人々が木綿は羊のなる木からとれると思っていたことから来ている。
ただ本作では、人間の在り方を羊に喩えることの多いキリスト教的なニュアンスを帯びたもののように感じられる。
キリスト教では人間は生まれながら罪深い存在なのだが、本作では実際に重罪を犯した6人が登場し、犯罪者の更生と過疎化対策という国家プロジェクトの一環で彼らを受け入れた市役所職員の主人公が振り回されていく様を、ゾクゾクするような展開で描いていく。
そして、この港町の丘に立っている邪悪性や罪の象徴のような「ののろさま」が彼らを見守っているように思える。
映画の終盤、彼らが抱える思いが飽和して溢れてしまったように、一気に怒涛の展開に突入する。
果たして人は罪を贖い、更生や再生することが出来るのか?
エンドロールの後に登場する静かな海の風景に何か悟りのようなものを覚えた。