あず

羊の木のあずのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
3.6
試写会にて。

個人的に邦画現役最高監督だと思っている吉田大八監督最新作。原作未読。


過疎化が進む魚深市がその解決策として凶悪犯受刑者を極秘で住民として受け入れるプロジェクトを試験的に導入する。

その担当となった市役所職員・月末(錦戸亮)。6人の受刑者に恐怖を感じながらも受け入れていく。

そんな中、魚深に伝わる伝説【のろろ様】のお祭りが行われる。


『桐島』の松岡茉優、『紙の月』の池松壮亮などなど吉田監督の最大の特徴である絶妙すぎるキャスティングは今回も健在。

錦戸亮の何の特徴もない普通の地方市役所職員、不穏さしか感じられない元受刑者の松田龍平など主役級だけでなく、元ヤクザを受け入れるクリーニング屋の店主安藤玉恵までキャスティングは完璧だった。


ただ、完璧に計算し尽くされたとしか思わない『桐島』や『紙の月』と比較して本作は脚本、演出面で荒さが目立ってたように感じてしまった(前作、『美しい星』でも少なからず感じてはいたけど)


《以下、ネタバレ含む感想》
①試写会のティーチインで監督も仰っていたけど、本作はラストの解釈に関して観た側に大いに委ねられてる部分がある。生き残った4人の今後を感じさせる終わり方はあれで良かったと思うけど月末と文はあれで良いのかとても疑問。宮越が岬で問うたように、本作の根本的なテーマである過去に罪を犯した者を受け入れることができるのか否かという部分で「ラーメン」は良かったのか。

吉田作品は基本的に主人公が赦される終わり方が多いけど今回は赦され方が雑だったように感じてしまった。あのシーン自体は良いんだけど、あそこに至るプロセスが雑な感じ。


②優香演じる太田と月末父が恋に落ちるところの理由がはっきりしない感じがした。彼女のセリフ「私はもう人を好きになってはいけないのか。」というのは核心にせまる大切なところだったけど、あのふたりがお互いどこに惹かれて恋に落ちたのか分からない。月末父が勝手に発情しただけにみえる。


とまあ期待値マックスな吉田監督作品だからこそ残念に感じてしまう部分はあったけどそもそも邦画でここまで期待できる監督は他にいないしこれからも応援してます
あず

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