田舎町に受け入れられた6人の元殺人犯を描く群像劇。
吉田大八監督で群像劇と言えば『桐島、部活辞めるってよ』という大傑作があるため、否応にも期待が高まります。
序盤は元殺人犯の6人が街に入り生活を始めていく過程が描かれ、その中で彼らは何かがおかしい?なんか変だ?そういった違和感が積み重さねられてゆく。
吉田大八監督の映画では違和感の積み重ねが上手く『パーマネント野ばら』や『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が最たる例だと思いますが、その違和感から突如として抜群の切れ味を見せるシーンがやってくる、そういった展開が私は大好きなので今作でもその切れ味が見れると思っていたのですが…
あれ…?なんだか切れ味が鈍い…?というか思ってたよりも地味でした。
要所要所の緊張感の作り方は流石というべきか、本気でゾワゾワさせるシーンはあるのですが、それ以上を見せてくれない。
まずメインの元殺人犯の6人なんですが、最終的に異常さを見せるのは1人だけなんですね。この映画は126分とそこそこ長めなんですが、それだけ長い時間をかけて6人を描いておきながら最終的な盛り上がりに絡んでくるのは1人だけ。そしてそのラストもイマイチ盛り上がりに欠ける。これではちょっと消化不良。ラストにはカエルの雨を降らせるぐらいやってくれないと納得できないですよ。
逆に良かった点は役者の演技ですかね。松田龍平のどうみてもサイコパスにしか見えない演技は流石でしたし、優香の妙なエロさも良かった。主演の錦戸君はザ・普通の人を良く演じていたと思います。演技やキャラクターは良かっただけにもっとインパクトが欲しかったなぁ…
吉田監督の作品では去年の『美しい星』のほうが面白くてインパクトがありましたね。またキャッチコピーに「信じるか疑うか」とありますが、そんな感じの映画が観たいのならば『怒り』を見たほうがいいです。