ゆっけ

羊の木のゆっけのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
3.5
人をどこまで信じられるか?

殺人歴のある元受刑者6人を過疎対策として受け入れた架空の町が舞台。

設定が面白いだけに、もっと気持ちが良いものを期待した人もいるかと思います。自分も、良い映画だなとは思いましたが、もう一度観たいかと言われたら、そうでもない作品。

吉田大八監督といえば、『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』がめちゃ良かっただけに、少し物足りなさを感じてしまったのは、

上記の2作においては、どうにも追い込まれてしまった主人公(それもおもわず共感してしまうような境遇)が最後に自身の手で”解放”への道へ進むという、成長が垣間見れて終わる感じが清々しい気持ちにさせてくれたからだと思うのですが、

今作は、主人公が普通の人だからか、全く共感もできず、成長もさほど感じられず終わります。

冒頭のそれぞれの元受刑者たちを一人一人受け入れていく不穏感は半端なく(素晴らしい)、最終的にそれぞれがどうつながってどうカオス的な展開になるのかと、ワクワクしてしていたのですが、
そこまで、大きな展開もなく、、、

別のものを期待してしまったという点で満足度は下がってしまいましたが、役者陣はとても良かったです。

特に、宮腰演じた松田龍平が、安定のサイコパスぷりが発揮されていて良かったのと、チンピラの北村一輝、艶かしさが漂う優香が良いキャラクターを演じてました。

「羊の木」とは、劇中にも登場する絵でもあり、

「かつてヨーロッパ人は綿が羊の木から収穫されていると思っていた」というエピソードが元になっています。

つまり、「人を信じるということ」に対してのものの見方を象徴したものです。

見た目や貼られたレッテルで人を判断するのではなく、
大切なことは、自分の目で正しく見て、他者を受け入れるということ。

『人が肌で感じることは大概正しいです。』
と言った大野に対して、クリーニング屋の店主の返しが、この作品で一番グッときました。

栗本が、家の庭にお墓を作り、そこに再生の芽が出た点に救いも感じさせる、人の再生をも描いた映画でした。
ゆっけ

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