ホイットモア大統領

羊の木のホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
4.0
本作にはタイトル通りの絵が描かれた円盤が登場するが、監督はこの意味については言及していない。
ただし、冒頭に東タタール旅行記なる書の引用文が提示される。

「その種子やがて芽吹き
たたーるの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る」

また原作には、コロンブスの時代、木綿は「羊の木」から取れると思われていたという記載があるそう。理由は、植物性で羊の毛に似ているからということだ。

これらのことから、俺個人的な意見としては、“円盤に描かれているのは5匹の羊”、“死んだものから芽が出る” ことにちなみ…

一度死んだ(捕まった)者は、魚深市=木/タタールに集いし(迷える子)“羊” として再生する。
そして、主人公月末は、木綿は「羊の木」から取れると思われていたように、純粋な気持ちで物事を見れるのか?

ということを表しているのではないだろうかと思う。とすれば、羊が1匹足りないのも納得だ。

タタール旅行記の「貪る狼」というのも、本人たちか、周りの人間か、斡旋した政府か。それとも我々か…。
吉田大八監督作品は『美しい星』に続いて、毎度解釈が委ねられるから面白い。

ちなみにMVPは優香。次いで北村龍平。
最優秀コンビ賞は田中泯とクリーニング屋店主。