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サイレンのKEYのレビュー・感想・評価

サイレン(2016年製作の映画)
3.2
町外れのとある協会、床には大量の山羊と人間の死体、床には魔法陣、壁には血の足跡が生々しく残っている。そこで裸の少女が発見される。警官はその少女に食い殺されるが、「専門家」と呼ばれる男が少女に足枷をつけ、物語が始まる。

場面は切り替わり、結婚式前夜、主人公は兄に連れられ独身さよならパーティーに行くことに。
「今日はハメを外して楽しむぜー‼︎ウェーイ‼︎」と意気込み、ストリップバーに行くと、知らない男に誘われ、もっと良い場所へ案内してもらうことに。

ここまではホラー映画のありがちな物語を、何の捻りもなく描いている。
しかし会場に入ってからカメラワークや、キャラ設定がとても凝っている。
カメラを横向きにして撮ったゲロを吐くシーンや、歪みまくる画面は泥酔&ハイな状態を面白く表現している。

今作の惜しい点は、キャラ設定である。
上で凝っていると書いたが、正しく訂正すると「凝っているだけ」なのだ。
例えば重要な設定の1つで、誘われた会場の中で「記憶を抜き取られる」と言う設定があるが、これが一向に意味を成さない。

「物に価値などない。一番価値のあるものは経験だ。」と言うセリフがあるが、格好だけで、深い意味は全く無いのだ。その後主人公が経験すること自体も、説明が無さ過ぎて理解に至らない。

冒頭で登場した少女が、成長して後に登場するのだがこれも説明が不足している。
終盤不意に「リリス」と言う名前で呼ばれていることと、相手から自由を奪う歌声から察するに、ユダヤの伝承にある男たらしの悪魔「リリス」と、ギリシア神話の海の怪物「セイレーン」から作った悪魔なのだろう。

物語中盤、この悪魔との濡れ場があるが、パックリ割れた顔面と言い画的に迫力が有り、このシーンだけでも観る価値があると思える出来だった。(このシーンだけ80点)

そもそも独身さよならパーティーに誘った兄の理論で考えると、結婚こそ確実に不幸な出来事である。
しかし主人公は、独身さよならパーティーでさえも不幸に終わる。

リリスやセイレーンの創造の背景に、女性権力に対する恐怖心があったのは言うまでもない。独身さよならパーティーだって、結婚で女性権力によって自由が奪われる前提での儀式である。
いつの時代も男は、女性に怯えながら生きている。今作とは違うラストを迎えたとしても、それは幸せと言えたのだろうか?
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