えむ

ムーンライトのえむのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
薬物ジャンキーの母親、人種差別、性的マイノリティー、
どれひとつとっても人生ルーレットで当たりを引いたとは言えないのに、同じひとつの境遇の中でも、幾重にも重なっていることで仲間がおらず、常に孤独の中にいる主人公。

気にかけてくれるのは、麻薬の売人と同級生だけ。

ひとつひとつの題材は手を変え品を変え描かれてきたと思うし、大きく強く訴えかけてくるような要素はないのだけれど、何故かとても雰囲気がある映画だった。


特に、少年期、思春期、青年期と俳優が変わって、風貌もかなり違っているのに、その孤独に揺れる瞳は同じで、ああこれが成長した姿なんだなと何故か納得出来てしまうのが不思議なところ。

それくらいに、彼の中にある『孤独の影』が、姿形を超えて色濃く滲み出ている作品だったし、それがこの作品の核となるところなのかなと思う。


『黒人の肌は月明かりの元では青く見える』

どれだけハズレくじを引いたとしても、自分が闇夜に紛れる『ブラック』なのか、それとも月夜に照らされて輝く『ブルー』なのか、それを決めるのは自分自身。
選択肢は1つではなかったはず。

大人になって、刑務所から出たあと『生まれ変わって自分を鍛え直した』と言うけれど、結局子供時代に助けてくれた人と同じ『麻薬の売人』になってしまうところは、なんだかモヤモヤしてしまうな。

それが紛れもない現実、『それが人生』なんだろうけど、もう少しだけ希望が観たかった気がする。

個人的には子供時代が1番良かったかも。
まだあの辺では少し希望が持てたから。
えむ

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