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ムーンライトのwtson322のレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
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褐色の肌に伝う涙、血、そして注がれる月明かり。
寒色を基調としたアンビエントな画作りと出張りすぎない台詞回し、黒人英語特有のスムースなリズムとリエゾンが心地よい。
今までアフリカンアメリカンカルチャーを描いた映像作品は数多くあれど、シャロンのように貧困層でありゲイである黒人に真摯にスポットを当てているという点で非常に意義深い作品。
演者の視線や身体の挙動で物語らせる手法は、三部構成の本作において”シャロン”というひとりの人物が描写されるとき、感動的な一致を生み出す。
更に特筆すべきはその音楽だろう。マックスリヒターと梅林茂を足して2で割ったかのような、繊細で雄弁な弦楽器メインの旋律。ロマンティックながら金属的な音とかすれた不協な音階の調和。マイアミのざわめく波音も画面に彩りを添える。全編を通して吐露される台詞は少ないかわりに、シーンに合わせたテーマ音楽とそれぞれ毛色の違う歌詞付きの4曲の挿入が印象的。特に『ブエノスアイレス』や『トーク・トゥー・ハー』でも使われた「ククルクク・パロマ」をバックに車を走らせる場面はその示唆性に泣ける。
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