チャンミ

ムーンライトのチャンミのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.5
「messy」に本作の評を寄稿しています。
http://mess-y.com/archives/44438

「ゲイ映画」「LGBT映画」といった呼ばれ方もされる本作ですが、そうした矮小化では見えなくなる多層性がキモで、貧困、人種にからむアメリカの社会背景にふれたり、他人のセクシュアリティに名付けたりする、規定の暴力性について書いてます。
シャイロンも、誰も、一度も自分を「ゲイ」とは名乗ってない。
そんな未分の戸惑いとアイデンティティをめぐるドラマの美しさ。


☆以下は試写を観たあとのザッとした感想。

ふえー、これがアカデミー作品賞って、ちょっと、信じられない、良い意味で。
昼のシーンもあるけどぜんたいのトーンは夜中の静けさで、だからもっとも美しいのも夜中、海辺で。

この作品に「LGBT」といった政治的な生ぐささをつけたくない。
「ゲイムービー」とか「LGBTを描いた」とかマクラをつける向きがあったら、全力で否定したい。
つまり肯定したいのは、この作品が個人が尊厳を獲得し、与え、奪いもする、という話として。

(とは言え、個人的なことが政治的なことと結びつくのも実際で、ならば、「クィア」と「有色人種」という見方は適当だとおもう)

この地味な根を張る傑作を、アカデミー賞受賞前に買いつけたファントムフィルムの英断は支持する。
けど、アフリカンアメリカンのカルチャーに造詣の深い翻訳家の押野素子さんらがツイッターで指摘したとおり、やっぱり主人公の名前を「シャイロン」ではなく「シャロン」と女性に与えられがちな名前に翻訳したのは正したほうがいいとおもう。
なぜなら、「シャロン」と名づけられた人間が作中見舞われる事態をどう受け止め、成育するかと考えたら、だいぶ変わるから(日本人なら、「ヒロム」と「ヒロミ」の差、みたいな)。