みちお

ムーンライトのみちおのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.0
黒人、ゲイ、貧困、ネグレクト、麻薬。
自分とはほぼほぼ共通点がない主人公を
基にした映画でした。
でも、だからこそ、映画の意味というのを
改めて考える事が出来ました。

以下、長々と書きます。

まず月並みですが、直感的に素晴らしいのは映画の彩色。美しい。
マイアミの自然、海や木の葉や空が美しいのは勿論の事、出てくる黒人の肌までもが漆黒のようで美しい。
どうやら、撮った映像を加工しているようで、青色を入れているそうです。

ここには、映画のタイトル「ムーンライト」が大きく関係していると思います。
主人公の少年期を支えた1人、ファンが
主人公シャロンに
「昔、自由に月の光の下で走っていたら、
見知らぬおばあさんに黒人なのに、青の子と言われた」
と伝えた事が関係しているのではないでしょうか。

映画のポスターは青色と赤色で幼少期、少年期、青年期のシャロンの顔を合成して作られています。

青色には、「解放」の意味があるようです。黒人として、ゲイとして社会から勝手に人物像を植え付けられ、自分が何者かを考え見つける前に、イメージが固定されてしまう社会へのメッセージなのではないかと考えます。
幼少期のシャロンもまた自分が何者か見つける前から「オカマ」だと言われていました。
「自分の人生は自分で決めろ。他人に任せるな」というファン
言葉がまた、映画の主軸にまた結びついてるように感じます。映画の彩色を美しいと感じる理由に、自由・解放を意味する青色が入っているのは趣深いメッセージのように感じます。

一方で赤色は「緊張・怒り」を表すようです。 少年期のシャロンはあまりにも悲しいすれ違いにより、ある間違いを起こしてしまいます。差別により生まれてしまう怒り・悲しみがポスターに表れているのではないでしょうか。

ちなみに世間のイメージとの葛藤に暴力に走ってしまう黒人映画はいくつか観てきました。スパイク・リーの『ドゥザライトシング』は差別に暴力で訴える事の愚かさを描いています。大切なのは言葉で権利を主張する事。ムーンライトでも暴力の物悲しさを出すことで理解し合うことの大切さを描いているのでは、と感じます。

最後になりますが、映画の意味について触れたいと思います。
文頭で触れたように主人公とはほぼほぼ共通点がありません。
でも、映画は、本来全く違う人生を考える為にあるのではないかと思います。
この映画が、アメリカ第一主義を主張するトランプ時代に、白人の為にあると言われたアカデミー賞で受賞したのは、その意味を改めて問われているのではないかと考えられるのではないでしょうか。

ワクワクするような映画じゃないですけど、理解しようとする一歩を踏める映画だと思います。
みちお

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