Yusuke

ムーンライトのYusukeのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.9
確かに、王家衛の映画を思い起こさせる、カメラワークや映像の色調。
だが、王家衛の映画のような、長々しく退屈な主人公のモノローグによる内面の吐露は無く、かと言って、同じくLGBTを主題にしたXavier Dolanの映画のような、過度な演出による心情描写もない。

この映画において、観客に最も想像力をもたらすものは、主人公の成長過程を部分的であれ、綿密に描く(三人の俳優のキャスティングが本当に素晴らしい)ことで、3つの時期における、目、顔、身体、話し方、服装、歩き方といった、主人公の持つ身体的イメージの不変/変化点ではないだろうか。

主人公が持つ、心の脆さや弱さを、決して言葉で語り過ぎないように丁寧に丁寧に描こうとしているのがよく分かる。(幸い主人公は口数が少ない。)
映画体験として、映像体験として、よき時間だった。

きっと主人公シャロンは、麻薬の売人をやめるのだろう。
過去と和解してゆく、前向きなセンチメンタル。
Yusuke

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