ちんたろう

ムーンライトのちんたろうのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
5.0
1.リトル、2.シャロン、3.ブラック
3部構成の物語を追いながら頭の片隅で漫然と考え見ていた。

同性愛、貧困、麻薬、黒人、差別、いじめ。この作品が内包するテーマは数多い。でもそれが考えるべき問題として提示されるわけではなく、一人の黒人少年の置かれた環境と青年になる過程で起こる事として淡々と描かれていた。

シャロンの持てるものは少ない。そのままの彼を理解し愛してくれたのはフリン・ステラ夫妻とケヴィン。母親は枷。そのフリンも売人の元締めで善人ではないけど本質は善良。ただキューバ人の彼には選択肢が少なかっただけ。
ケヴィンとシャロン、彼らを隔てた出来事がフルメタルジャケットのジョーカーとレナードとハートマン軍曹。シャロンから次々と奪われていくのが悲しかった
第3部のシャロンの姿が見えたとき
周りが何と言おうと自分の道を自分の力で進め
これが如何に難しいかを知らされた。

(身体的に)タフであること。
アメリカの黒人男性の強いマッチョ崇拝思想が(本質が違う)男性自身をより苦しめている。ゲイであることよりもそれがシャロンを生きづらくさせ、ケヴィンはそこから脱却できたからこそ息をするのが楽そうだった。

自身の環境が変わろうとも第2の母ステラとは連絡を撮り続けている。
シャロンを傷つけ続けた母親と裏切ったケヴィン、今度は彼らがシャロンを救うかもしれない。そうとも思える終わり。そうであって欲しい。が現実は難しくそうはいかないかもしれない。

どう在りたいか、どう在るべきか。
見た人によって何処を主題と捉えるかが変わる。それは間違いとかでなくその人の思想と長短関係なく人生の来し方によって違う。きっと物語から何も得られない人もいる。普遍的な問題を扱ってはいるけど、万人向けではないから

静かな話運びにジム・ジャームッシュをカメラワークはクリストファー・ドイルを思い出した
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