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ムーンライトのkrhのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.9
ずっとずっと胸が苦しかった。観た後は誰かを抱きしめたくなった。

3人のシャロンの一貫した演技が素晴らしい、成長しても体を鍛えても本質は変わらない、「ああ、シャロンだ」と一目でわかる孤独を湛えた佇まいと眼差し。それは3人で1人に見えるポスタービジュアルそのまま。ケヴィンも同様。
全体を通して繊細な演出が秀逸だった。説明はないけど自然に目が行き、想像させる。映像の美しさで、表情で、時に包みこみ時に刺してくる。

終盤の2人、核心を突かない会話のやり取りや、戸惑い、躊躇する距離感がもどかしくて苦しい。でももうこれでいいんじゃないのかとも思わせる。だから最後のシャロンの踏み込んだ一言と眼差しには涙が出た。彼らにはただ、関係性に、相手に、自分に、人生に納得して欲しい。

母親との関係の着地のさせ方も良かった。全てが今更でどうしようもないけど、区切りをつけることはできた。現実では難しいかもしれないけど。

音楽良かった。そこでかかっている曲をそこで聞こえるようにしている聞かせ方も良かった。うるせえ!って思うカーステレオの音量も、それが普通になってしまったシャロンのそれまでを想像させられた。しばらくはサントラを聞こう

黒人もLGBTも要素の一つでしかなかった。人間同士の愛の物語。もう思い返すだけで苦しくて泣きたい。今年ベスト級
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