悠

ムーンライトの悠のレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
【あの夜のことを、今でもずっと、覚えている。】

語られなかった、幻の受賞スピーチ。

「この映画の元になった戯曲を書いたタレル・アルバン・マクレイニーと僕は“シャロン”である。僕たちはあの少年なんだ。『ムーンライト』を観たら、あのような環境で育ってきた少年が、大人になってアカデミー賞に輝く作品を作るとは誰も思わないだろう。それは僕も繰り返し言ってきた。実はそうやって自らの夢を抑え込んで、否定してきたんだ。君たちや周りに否定されたわけではなく、僕自身がね。だから僕たちに自分を投影している人は、これを機に自分自身を愛してほしい。なぜなら、そうすることによって夢を見るだけでなく、許されないと思っていた夢を実現できるかもしれないからだ。アカデミーに感謝する。愛をこめて。ありがとう」

シャロンは寡黙で、こちらに多くを委ねられてしまって、文化とか状況とか知らないし、さほど苦労もしていない私には、掬いとりきれないことが多すぎた。心に巣食う何かがそれぞれにあって、それを、例えば支えにして、あるいは見ないふりをしながら、じりじりと燻らせながら、暗闇の中の光をみるまで、生きていく。


MOONLIGHT
悠