このレビューはネタバレを含みます
Moonlight(月明かり)に照らされるとき
黒人の肌は青く美しく輝く
内気で虐められっ子だった主人公シャロンと
彼を照らした出会いの数々
ドラッグディーラーのボスでイカついガタイをしたフアン
シャロンを拾って面倒を見た彼の心根の優しさと
彼がシャロンの母親にドラッグを売っているという事実
「ドラッグを売っているの?」と質問され「あぁ」と答えつつ涙を流す姿
良心の呵責に素直に苦しむフアンはその外見に似つかわしくない「弱さ」を露呈して憚りません
シャロンが大人になりムキムキになっても
フアンと同じようにディーラーとなり
同じ帽子?を被り
同じように車のインパネに王冠の飾りを置いているのを見たとき
内面には未だに「弱さ」を湛えていることが十分に想像できました
その弱さとは虐められていた過去と
そんな境遇にあったからこそ
心と身体を許せた友との大切な記憶
いじめっ子のレゲエ野郎に報復した結果
きっと彼は誰にも心を開けない真の孤独に苛まれる日々を送ったことでしょう
唯一の肉親としての母親
ドラッグによって情緒不安定な母親に散々振り回されてきた
「愛しているよ」という言葉を信じた矢先に裏切られてきた
それでも憎みきれない、離れられないし見捨てられない
時として絆は呪縛となる
大人になって更生施設で生活する母親に会ったシャロンは
母の懺悔と親心ながら筋違いな説教に耳を傾け
フアンと同じ涙を流します
小さく限定的なコミュニティーのなかで輪廻のように繰り返されるカルマ
それを自業自得だと、いったい誰のどの口が言い切れるのだろう?