チッコーネ

ムーンライトのチッコーネのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.5
「実際のゲイライフと随分かけ離れた脚本だなぁ」と思いつつ観ていたものの「そう言えば、日本のゲイクラブで知り合った人たちの中に、こういう子がいたかも」と思い直すに至った。
セクシュアルマイノリティというハードルに加え、さまざまな重荷(本作では崩壊家庭と人種問題)を背負う子供が、成長過程で備えた『頑なさ』を繊細に表現している作品と言えそうだ。

とは言え僕自身もゲイなので、(大人になった)主人公の固いバリアで閉ざされた心を単純に「美しい」と賛美することはできない。
『オールドミスの純粋さ』に似た、どこかいびつなロマンチシズムとして憐れんでしまうのだ。
わかりやすく言うと、本作は『隠れゲイ』の心理と行動を緻密に描いた映画なのである。
「暗い」と感じる人がいても当然だろう。
何しろ『ゲイ』とは本来、陽気という意味の形容詞なのだから。

作品全体を流れるリズムの中に、どこかウォン・カーウァイからの影響が漂っているように感じられたのだが、カエターノ・ヴェローゾが流れてきたりしたので、あながち間違っていないかもしれない。
テレーサ役の女優はどこかで観た顔だと思っていたら、ジャネール・モネイだった。