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ムーンライトのtagomagoのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.2
1人の人生を少年期から淡々と追うだけの物語。「6才〜」と通ずるけどもっと詩的で美しい映画。観た人誰もが好きになる映画だとは思わないが誰かにとって特別な1本になることは間違いない。

黒人でゲイというとマイノリティー中のマイノリティーだと思うけどそこの問題を声高に主張していないのが好感が持てるところ。自分とはいったい何者なのかを見つける普遍的な話だから遠い話ではない。

お互いの気持ちは分かっているはずなのにあの探りを入れてる感、お互いに踏み出せない感がホントむず痒い。そんなのは男女のそれ以上にそれで気持ちを言葉に出して伝えるって難しいことを丁寧に描いています。これこそが純愛映画。やっと自分で人生を決めることができたと思うと泣けてくる。
男同士のラブストーリーってなかなか食指が動かないというか積極的に見れなかったんですがそういう自分が恥ずかしい。

フアンのお仕事風景を伝える最初のワンカットでおっこれは…と思いました。まずどんな奴かを過不足なく説明しきってるし、撮影も長回しでいい。人物に焦点合わせて周りの風景をぼかしてる。そして人物に合わせてカメラも回る。こういう印象的なカットが最初に提示されると参りましたという気分になります。シャロンの背中越しのショットも印象的でした。

映画の幕開け「every nigga is a star」も最高でした。ケンドリック・ラマーの「To Pimp a Butterfly」にも使われていて、あのアルバムは自分の内面を吐露し、社会に絶望し、自殺しかけるも自分のルーツを知り自分らしく生きていくことを宣言し「i」という曲で自分のことを好きだと言えるようになる。まさに詩のようなアルバム。そことムーンライトに共通点を見出せる仕掛けになってるのは思わず唸りました。考えすぎかもしれませんが。
あとジデーナの「クラシックマン」という曲がかかる場面があって、この曲は自分の中で謎曲という分類をしてたけど映画の中で聞いたら名シーンを味わい深く演出してましたね。因みにリミックスverでケンドリックを召喚してたりします。

ゲイをカミングアウトしたフランク・オーシャンの人生と重ね合わせることもできるし、ジャネール・モネイも出演してる。ブラックミュージック、ヒップホップ好きにもたまらない映画だと思います。
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