全編に渡って青を基調とした映像美。
曲は違えどドビュッシーの曲を想わせるような静けさと揺蕩う感覚は秀逸でした。
漠然と観てしまうと気持ちが乗り切れなそう。それぐらい淡々と、登場人物を三つの章に分けて様々な側面から描いてます。
私が一貫して思ったのは…
人は人によって作られるってこと。
その難しさや複雑さを表現していたと思う。
リトルは言葉にしないで瞳で感情を語る。
愛されたい。必要とされたい。
愛されない。必要とされない。
両方を心に抱えた少年…
シャロンを演じた三人の演技は凄い。
人が自らを受容するのに必要なもの。
そこに至るまでの葛藤。
そして、それはシャロンだけの話ではなくて…それを取り巻く人々も同じ。
その人をどう理解していくのか。
簡単に言葉で表せない…心の在り方。
それは波間に映る月の光に似ている。
常に揺れ動き、形を変えていく。
今作はラストで静かに満月を迎える…
その描写には安堵と感動を覚えました。
余地や語られぬ部分を観る人に委ねる事で、評価が難しくなっていると思う。
感じ方は人それぞれ。
この作品を観て、何を感じて、何を得るという事は、その人のそれまでの価値観や考え方で変わる…
それは対象が人であっても変わらない。
ただ、それが人である以上…
その人が自分をどう捉え、理解していくのか…それはその人に委ねられる。
自分を受容すること。
他人を受容すること。
互いの心に触れるってこと。
必要なのは心だなー…やっぱり。
と、エンドロールで思ったのでした。
カタルシスを得るような、心を大きく衝き動かす内容ではないけれど…月光に照らされた海の前で佇む少年が印象的でした。