とりん

ムーンライトのとりんのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.9
黒人だほうがゲイだろうが愛は美しいもの、それを3つの時代に分けて描かれていた。
まだ世の中は人種差別については無くならないし、同性愛者についての偏見も多く見られることは多いであろう。
そんな時代の中でもこの映画は関係なく、丁寧に美しく光っている。
2時間弱、ずっと画面に釘付けだった。

唯一の肉親の母親は薬づけ、学校ではオカマといじめられ、過酷な少年時代の中でも支えてれたのは唯一の友達とたまたま出会った優しき大人たちだった。
特に起伏などもなく、アクションシーンもないし、展開も多くはない。それでも惹きつけられるのはこの映画の映像の美しさにあるのだろう。
他の人のレビューを読んだりして納得したのは色彩使いが上手く、綺麗に表現されているということ。
ある男のそれぞれの時代にあった色彩を使用することでグッと惹きつけられる。
他にもイジメによる苦しさや痛み、いじめている側よりもその反抗をした一度だけでいじめられた側が罰せられる、そんな辛さも描かれていた。

タフな身体を持っていても内気で自分の性格や内面をぐっと押し込んでいた少年期や青年期、大人になって成長したように見せて、実は見栄を張っているだけである。
初めて心を通じ合えた相手との再会の時、会う前に髪型を整えている姿は印象的。それまで売人という肩書で強面になっていた彼を少年期に寄せたようにも感じた。
言葉数も多くなく、観る人によっては退屈かもしれないけれど、そこに愛を感じたり、映像に惹かれだすと、そのまま引っ張られてしまう。

"自分の道は自分で決めろよ、周りに決めさせるな"
当たり前のように感じるけど、すごく印象的な言葉。
作品に愛を感じる映画だった。
とりん

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