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ムーンライトのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.5

自分とは🎬

ストーリーはマイアミの黒人コミュニティに暮らす孤独な少年の成長を描いた作品でした。個人的には正直「La La Land」の方が好みでした。最近のトレンドはマイノリティを題材にしたものが多く、賞を受賞するのもトレンドを意識にした作品になっています。観終わった後のモヤモヤ感がとてつもないです。

今作は様々なテーマが詰まっていました。黒人社会特有の文化や、貧困や麻薬中毒などの社会問題、LGBT問題や家族や友人との絆など、様々に絡み合ったテーマが、美しく詩的な映像美の中で淡々と展開していく作品でした。主人公シャロンと準主役のケヴィンは、幼少時代、青年時代、成人後と3つの時期をそれぞれ別々の人物が演じています。全く別々の人物が演じているのに、映画を通して見ると、一人の「シャロン」という同じ人物に見えてくるという不思議さは、今作での見どころの一つです。この映画の核は「どんな状況であっても自分自身であること」の大切さであると感じました。前半部分でフアンが幼少時のシャロンに海で泳ぎ方を教えるシーンがあります。この描写は、シャロンが「人生という大海を自分の力で渡っていく重要性を初めて教わり、自分の心に刻んだ」と読み取れるシーンでした。その直後「自分の人生は自分で決めろ。他人に決して決めさせるな」この言葉に強いメッセージを感じました。

最後はシャロンが自分自身を取り戻して静かなハッピーエンドを迎えます、母親のポーラ、親友のケヴィンも含め彼らは物語のスタートから15年以上の長い時間をかけて、ようやくそれぞれ本当の自分を取り戻していきます。自分自身と向き合うには膨大な時間がかかるという事も学びました。経済的状況や世間体、周りの期待、社会条件など様々な要素が絡み合う中で、自分自身の気持ちに素直になり、自分らしく生きていくことは、大人になればなるほど難しくなっていきます。何も知らない子供が1番幸せかもしれませんね。
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