coma

ムーンライトのcomaのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.5
自分の人生を他人に決めさせるな。
理想をいえばそうなんだけど。
本人の怠慢でもなんでもなく、自分の人生を決められない人間は居るでしょう。

特に子供であればなおさら。
少しずつ、人生の選択肢の幅が狭まっていく。
肌の色、麻薬、貧困、育児放棄、親の(親代わりの人間の)職業…
いくつもの要素が、未来を奪っていく。
正しい道は分かっているのに、あまりにも遠くて届きそうにない。シャロンをその道へと導こうとする人々もまた、社会の中であまりに無力だから。


主人公・シャロンを3人の俳優が演じている。少年・青年・成人期の3部構成。
驚くほど、瞳の演技が3人ピッタリと合っている。風貌が変わっても、彼がシャロンだということが明らか。すごいね。

本人の意志とは反する方向へと人生が転がってゆく。深くてもう引き返せないほどに。なんという無力感…
でもこの映画には、ハッキリとした救いがある。
何一つ選べないような境遇にあっても、ただ1つだけ、主人公には他の誰にも変えさせなかったものがある。誰にも奪えなかったものと言ってもいい。

彼の愛は月の光のようにひっそりと。誰にも消せないその光は途切れることなく浜辺のかつての彼らを等しく青く照らしていたに違いない。
誰にも奪えないものの輝きを見ました。

人が人を愛するということにも、時には差別が生まれる。偏見は、もしかしたら無くならないのかもしれない。
しかしそれは誰にも奪えない感情であるということに、希望があると思うのです。
coma

coma