EmiDebu

ムーンライトのEmiDebuのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
2.5
かなりの話題作で、とても白熱した年のアカデミー作品賞でもあったわけで、しかし、自分が好きな映画や間違いなく面白いと言える映画と比べてみると正直退屈に思えた。これは、「自分の理解不足」と言うこともできるんだけど正直にいうとアカデミーで話題になったから高い評価をつけてる人が多いと思っている。逆に問いたいのは「ここで高評価をつけている人はアメリカの貧困地区のこの様なリアルな状況を理解しているのですか?」ということだ。

つまり、これって日本人が観て「これは素晴らしい」って手放しで言える映画ではないよねってことなんだ。もちろんセクシャルマイノリティやいじめなどは国を超えて普遍的なテーマではあるかも知れない、しかし俺はマイアミの貧困地区のリアルな暮らしぶりやこの様に生活している人を知らないし、この地区でのドラッグの折り方やゲイとしての生きづらさを肌で感じる様な距離にはいなかった。1人のゲイであり、多少アメリカ文化に精通している自分であってもだ。逆に、理解もしていない人がネームバリューだけで評価していることに対し失礼だと思った。例えば海を洗礼に見立てるシーンだって日本人だったら気づかない人も多いだろうし気づいても一つのカトリックの行事でしかなく、その意義にどれほどの価値を見出せるというのか。

もちろん、全ての映画に対して100%の知識がなければ正当に評価できないわけではない。共感ができない珍しいものだから映える映画もあるだろうし、映画によってはとあるなんでもないワンシーンに個人的な強い共感を持つ人もいるだろうし、それを否定できることはできない。この映画に関しては1人のリアルな人生を共感してこその面白さだと思うのでそんな話をしているが。

これは今まで他の映画のレビューでも書いてきたが、初めてプラトーンを観た時全く面白いと思わなかった。しかし周りの映画好きは口を揃えて「名作だ」という。どこが良かったか聞いてもあやふやなもので、彼らがプラトーンを面白いと評価する根拠は「有名な映画コンペティションで評価されているから」というものしかなかった。その後高校の地理の先生にプラトーンが面白くなかった旨を伝えたら快くベトナム戦争におけるプラトーンの歴史を説いてくれた。加えてこれはアメリカでは誰もが習うものであるということも。それを知ってから観たプラトーンは今でも忘れられない。「こんなに面白い映画あるか!?」と思ったほどだ。

きっとこの様な現状が身近にある状況において、これはとてもリアルに目に映りその悲惨さや救いようのなさ、出口のなさに共感し、それでこそのアカデミーだと思うのだ。常にこれは念頭においているが間違いなく日本と海外の評価が100%一致するはずなんてない。逆に言えば外国の人が正当に日本の映画や作品を評価できることはほとんどない。男はつらいよの有名な口上である「わたくし、生まれも育ちも」というたった1つのセンテンスでさえ英語では「I was born and raised in ~」にしかならず、このセリフから日本人だと分かる時代的背景や、育ち、職業といった情報が海外の人は得られない。言わば、理解するためにはかなりアウェイなんだ。

勘違いしないで欲しい。そこそこ低評価をつけたのは「この映画はクソだ」とかそういうネガティヴなものではなくて、映画は素晴らしいものだろうけど共感するにはあまりにも遠い出来事で目に写る表面的な苦悩しか享受できなかったが故だ。だけど、もちろん理解することって必要で、これを遠いどこかの悲惨なお話として放置するのではなく共感しようとし、そしてリアルな現状を学ぼうとするプロセスを問われているはずだ。手放しに「悲惨」又は「悲しい」なんて言ってられないだろう。確信はないが、その「リアル」を学びより共感できる様になり、知識をつけたらこの映画はもっと面白いものになるその伸び代なんだと理解していただきたい。

決してエンターテイメントではなく、1人の人生を描いている。この1人の人間の苦悩を容易に「理解した」とは到底俺の口からは言えないふ
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