Jiyong

ムーンライトのJiyongのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
5.0
あまりにも良い映画だった。久しぶりに映画で泣いた。凄く美しい。
絵作りも脚本も演技も美しい。凄く苦しくなるんだけど、流れるように三章を描いてるからか、嫌な重みは残らない。
第一章は"ブルー"がテーマなことを明記するために、黒人の肌の色を強調する色彩とセットの色のバランスだった。1番美しく黒人の肌を映す色だった。
第二章では"ブルー"そのものにフォーカスを当てたようだった。シンメトリーの演出も第一章より多くなり、より劇的な生活と主人公シャロンの複雑な心境を演出してるようだった。不安定なシャロンをシンメトリーで映すという相反する表現が歪で良かった。
第三章は青みが少し少なくなって、フィルムっぽさが増していた。昔のシャロンに蓋をしているということの現れだろう。シャロンを演じた3人は一度も会わずに撮影したそうだけど、もう同一人物にしか見えなかった。
助演男優賞を取った第一章に登場するフアンの言葉は本当に詩的でよかった。知性と優しさのある言葉を持っているフアンは売人で、シャロンの母親にヤクを売っている人。このどうしようもなさが個人的かつ社会的な問題を抱えていた。凄く個人的な映画だけど、社会とのつながり(映画が社会に訴えたいこと)の部分をフアンが握っているように感じた。
無音の使い方も非常に良い。音楽も物語世界上の音も消え、静寂になる演出が何度かある。それらは、シャロンがサイアクな気持ちになる瞬間に訪れる。世界を遮断したいほどのサイアク、をシンプルな手段で描く。
月の光に照らされると黒人の子は青く見える。
画家の先生かだれかが「黒人を描く時、影は青で入れればいいんだよ」と言っていたのを思い出した。自分もこの映画を見ながら、黒人の肌はブルーだと思った。凄く美しかった。美しすぎて涙が出る映画だった。
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