ムーンライト(2016年製作の映画)

Moonlight

上映日:2017年03月31日

製作国:
  • アメリカ
  • / 上映時間:111分
    監督
    バリー・ジェンキンス
    脚本
    バリー・ジェンキンス
    タレル・マクレイニー
    キャスト
    マハーシャラ・アリ
    シャリーフ・アープ
    デュアン・"サンディ"・サンダーソン
    アレックス・R・ヒバート
    ジャネール・モネイ
    ナオミ・ハリス
    あらすじ
    名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校では“オカマ”とからかわれ、いじめっ子たちか ら標的にされる日々。その言葉の意味すらわからないシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だ った。高校生になっても何も変わらない日常の中、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初 めてお互いの心に触れることに・・・

    「ムーンライト」に投稿された感想・評価

    このレビューはネタバレを含みます

    マイノリティとしての主人公の単純な葛藤だけではなく、その自分のアイデンティティと向き合い、進んでいく姿を、実に美しく描いた傑作。
    私は黒人でもないし家庭環境は悪くないしゲイでもありません。シャロンとの共通点なんてほとんどありません。しかしながら、どんどん彼という人物に引き込まれ、心に響いていきました。不器用なまでの葛藤はとても切なく、美しい表現をされていたのです。
    映像面に関してもそれは同じで、月明かりに淡く照らされる姿、街頭の色が濃く感じられる姿、、など、照明効果が素晴らしい。登場人物には黒人しかいませんが、黒人ならではの美しい色合いの画面に仕上がっていました。
    ただ苦しむだけ苦しんで鑑賞者に何かを感じさせる作品ではなく、この苦しい中での彼の生き様に心揺さぶられる作品でした。
    全体を通して、まるでシャロンの人生の転換期を切り取ったような作品で、大きな盛り上がりはありません。その淡々とした演出こそ本作の良さでもありますが、正直分かりやすいエンターテインメントのほうが好きな身としては、好きかどうかは微妙なところです。
    とはいえ、
    フアンやケヴィンとの思い出の象徴となる海や、母親との関係、様々な要素が一貫して描かれており、構成力は抜群です。その中でとても重要だと感じたのが「食事」のシーンです。個人的に映像作品での食事シーンは注目してしまう癖があるためか、シャロンを取り巻く人間関係を絶妙に表現していたと感じます。
    彼の父親的な立場として現れるフアンはまず飲食店で御馳走し、フアンの恋人テレサは手料理を振る舞ってくれます。シャロンと互いに心を開いた証として食事というキーワードが取り込まれていたように感じます。
    3部構成でいう第1部は特にその食事シーンは印象的ですし、心に大きなショックを受けることとなる第2部では独りで食事しているシーンなんかもありました。ケヴィンとの肉体的な繋がりができるのは第2部ですが、真につながることの叶わなかったこの時には、食事というパーツで彼らが表現されることはありません。
    第3部で料理人となったケヴィンが飲食店で手料理をシャロンに振る舞うことになるのですが、まさにテレサとフアンの2人の要素を盛り込んでいると感じました。環境により様々な苦痛を感じていたシャロンが、ついに報われることになるこの場面。大きく純粋で不器用な愛を確かに感じました。
    共通点の少ない人にここまで引き込まれ、その美しさを感じることができる映画体験となりました。単純な好き嫌いでいえば好きだと言い切れる作品ではありませんが、非常に完成度の高い、今観るべき作品といえそうですね。
    saba
    4.0

    このレビューはネタバレを含みます

    バキバキの映像美。奇跡の恋愛映画。
    〜 どんな虐げられても、受け入れてくれる人はきっといるぜ!人生は。


    カメラワーク
    人物バックショット、
    水面からの洗礼カット、
    砂浜のカット、
    ほぼ全編。

    手持ちカメラ、アングルはワイルドで、
    美しすぎる映像トーン。
    肌の質感。光のハレ。水中の洗礼。メシ。
    手のコミまくった映像美

    男の子の演技。
    虐められそう。

    名言「自分で決めろ」
    名言「お前だけだ。」

    キャラクター性
    近所の粗暴だけど優しいオジサン。
    暑苦し距離感
    肝っ玉母ちゃん的な優しさ。
    適度な距離感
    でも、シゴトはドラックディーラー。
    いかにもイヤないじめっ子たち。


    貧困、差別されてる状況がわからん。

    母親、泣いたところで許される問題?
    息子も受け容れるの?納得できず。
    少なくともあの段階では怒れよ。

    友人がバイ。奇跡的過ぎないか?
    結構フツーのハッピーエンド感。

    さすがにマッチョになり過ぎでは?

    砂浜の砂でゴシゴシはちょっとキモい
    性的表現抑えるなら、
    もっと控えるべきでは?
    GER
    -
    これがアメリカ社会。

    フレデリックダグラスの「苦しみのない進歩はない」という言葉がありますが

    その苦しみのひとつが人種の苦悩であることは間違いないです。
    のん
    3.7

    月明かりに照らされて



    作品賞の誤発表という前代未聞の珍事に見舞われた今年のアカデミー賞だったが、騒動に隠れていまいちパッとしない作品賞に輝いてしまったのたが「ムーンライト」である。



    LGBTを扱った作品としては初のアカデミー賞作品賞ということだが、確かに時代の潮流を捉えつつもアカデミーの会員好みの作品だったように思う。



    物語は3部構成で、1人のキャラクターを3人の俳優が演じる。


    差別と貧困の最下層にいる彼は、ゲイで、スラムの出身で、そして母親は薬物中毒というとんでもない境遇にいる。


    このあたりの理不尽な境遇に共感できるか否かが作品にのめりこめるポイントだと思うが、日本人にとってはあまりに特殊な境遇すぎていまいちピンとこなかった。


    ただしストーリーと映像が際立って美しい。全体的に青と緑を基調とした映像と中盤の海辺のシーンは本作のハイライトだと思う。
    シングルマザーに育てられたゲイの黒人男性の少年期、青年期、成人期の3部構成からなる成長ドラマ&純愛ドラマ。

    ドキュメンタリーの様に撮られたカメラワークと演出が、主人公の目線に入り込むことを許さず、客観的な鑑賞を促す。

    抜けのいい引きの絵がほぼ無く、息が詰まるような狭い寄りの絵が続き、散見されるレンズのフレア表現が、カメラの存在を強く意識させ、神の目線でハリウッド的感動物語として消費することを許さない。

    全体的に淡々としているが、一部での売人との交流などは感動的で物語としての強度はキープしている。一部ラストのテーブルのシーンなどは売人の彼の誠実さと葛藤が伝わってきて胸を打つ。

    青年期のロマンスシーンでも息苦しい寄りのカメラアングルは健在で、画面は暗く先を見通すことができない。環境的に広く美しい場所にいるはずだが、そうした要素はすべて排除されている。

    3部になると、引きの絵や、感情を映す表情のカットが入り映画的な演出が現れる。

    ラストの邂逅シーン。彼が過ごしてきた日々と長年体の奥に閉じ込めてきた気持ちを思うと、私はストレートだが彼の乙女心を抱きしめたくなる。

    夜の海辺で少年期の彼が月光に美しく照らされる姿。青く光るその肌は黒人の色の黒でも、白人の白でもなく、あらゆるしがらみから解き放たれた、彼自身の自由な姿を象徴しているのだろう。

    静かで余韻が残る感動的な作品だった。
    まいこ
    4.0
    疎外感や孤独に対してものすごく優しい映画。目と肌がとにかく綺麗。海に佇む背中の美しいことよ…

    このレビューはネタバレを含みます

    下高井戸シネマにて。
    「LGBTの映画」とか「黒人たちの社会を描いた映画」っていうあたまで観に行くと拍子抜けするはず。そういう、普通ならキーワードになりうる何かはただ、LittleあるいはChironあるいはBlackという一人の人間の人格の一部として、誇張されることなく描かれている。テーマは「LGBT」でも「人種問題」でもなく、あくまで彼について。
    まだ何者でもない”Little”がJuanに出会い、Teresaに出会い、あらゆる人間関係や痛みの中で”Chiron”になり、Kevinとの出会いを経て、何者かになるためにもがいて”Black”になっていく。
    3人の俳優たちがそれぞれの時期のChironを演じているけれど、外見は驚くほど変わっていくのに”Little”から”Black”になっていくまで彼の「眼差し」が一貫している。特に”Black”はその外見から全く”Chiron”とわからないけれど、彼がKevinと再会してからの顔つきはまさしく”Chiron”、そして”Little”そのもの。一見した”Black”は”Chiron”や”Little”と別人だけれど、”Black”の生き方は、”Little”や”Chiron”だった時期に撒かれたあらゆる種が発芽した結果であって、ある一人の人間のもっている人生の不思議な一貫性みたいなものを、目線ひとつの繋がりで表現している3人はすごい。
    受賞作だから、LGBTの映画だから、黒人についての映画だから、何かメッセージを受け取らなければ。と思わず、先入観なく観た方が結果として得るものが多そうな映画だと思う。
    south
    3.5
    月を浴びると青くなる
    あい
    4.3
    20170625
    とても静かな映画だった。
    主人公の孤独が、痛みが、夜の海のようだった。
    夜の海って、わたしはなんだか怖くて。静かに飲み込まれてしまいそうで。
    けれど、月明かりに救われるような気持ちになった。

    大人になったシャロンの体型の変化には驚いたのだけど笑、でもその内側にある繊細さが目や表情に確かに残っていた。

    フアンは第一部しか出てこないけれど、ずっとそばにいるような気がした。
    あの環境の中でシャロンを生かしたのはフアンだったのかもなぁと、彼がシャロンに伝えた言葉に思う。


    自分の人生を自分で切り開いていくということ。
    とても大事なことを教えてくれた映画だったと思う。