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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章の小のレビュー・感想・評価

3.8
こだわり強めなファンが多そうな人気マンガ原作で、実写化自体を嫌う声があるうえ、監督が『テラフォーマーズ』で酷評された三池崇史氏ということで、公開前から評判が悪かった映画。ちなみに私、原作は少年ジャンプから20代前半で離れるまで読んでいました。

(これから映画と直接関係のないことも長々と書いている感想駄文なので、興味のない方はスルーで。)

私、三池崇史監督作品、好きじゃないです。マス向け商業映画なのに結構尖っているのは良いのだけれど、その尖り方が自分には合わない印象。派手な映像とオーバーなアクションがウリなのかな? 三池監督作品は4作くらいしか見ていないけれど、面白いと思えなかった。

でも、三池監督のことは仕事をする人としては尊敬している。ウィキペディアによれば、<ジャンルを問わず「仕事は来たもん順で受ける」「映像化可能であれば、まず何でもやってみる」と公言しており、多作である>という。こういう人って、必要なんだよね。

メディアの仕事って、空間(紙面・誌面)や時間(放送時間)を与えられ、それを必ず埋めなければならない。新聞で言えば今日はニュースが少ないから、ページを半分にしますというわけにはいかないし、テレビで言えば面白い企画が思いつかないから、半年間バラエティー番組の時間は音楽を流すだけにします、というわけにはいかない。

仕事って納得できようができまいが、誰かがやるべきことをやらないと、社会が回っていかない。メディアに限らず、製造業だって本質的な機能は変わらなくても、毎年のように新製品を出さないとお金が循環しなくなり、生活に困る人が出てくる。

映画も毎週、何本もの新作を上映することで、映画業界が成り立っている。巨匠監督ばかりになって、作品の質はピカピカだけど、月に数本しか新作が上映されないなんてことになってしまったら、お金が回らず、かえって良質な作品も生まれにくくなり、映画文化はシュリンクしてしまうだろう。

つまり、作品の評価は高くないけれど、そこそこ人が呼べる映画というのは、映画業界、映画文化のためには必要不可欠なのだけれど、そんな映画を積極的に手掛けても良いと考える映画監督は多くはないだろう。

しかもそれが人気マンガ原作の実写化ならなおさら。ある程度の集客が見込める半面、原作ファンからは高確率でディスられる(『銀魂』でパロられていて可笑しかった)。プロデューサーは作って欲しいけれど、矢面に立つ監督は作りたくない。特に『ジョジョ』の実写化なんて、何を言われるかわかったものではない。三池監督以外、引き受け手がいないのではないか、と思ってしまう。

もちろん、いつもひどい映画ばかり作っていたら、監督としてお呼びがかからなくなるけれど、三池監督はそういうこともなさそうだ。多分、その気になれば多くの人が納得の映画を作る能力があるけれど、自己実現の方向性が巨匠監督を目指す人とは異なるのだろう。どんな仕事でも引き受けてくれ、それなりの作品に仕上げてしまう三池監督は、プロデューサー的な立場の人からすれば、とても有難い存在なのだろうと思う。

話は変わって、ようやく本作のことなのだけれど、この映画って三池監督らしくないのかもしれない。三池監督は何でも引き受ける代わりに、原作を自分の世界観に改変する傾向にあるらしい。それが上手くいくときと、いかないときの落差が大きいらしい。

『ジョジョ』は三池監督の尖った感じがあまりしない。『ジョジョ』の世界観が三池監督にあっているのか、それとも自らの世界観に改変することを抑えたのか、原作に沿った内容のように思え、そして面白かった。

個人的に『ジョジョ』の好きな点は、メインキャラクターの奇抜な見た目と性格に加え、彼らが持つスタンドと呼ばれる守護霊のような架空の超能力が、その持ち主に似て個性豊かでバラエティーに富んでいること。さらに、対決も決着に至るまでにひとひねりあることで、本作でもこれらがきちんと感じられた。

ちょっと可笑しい主人公の東方仗助は、そのスタンドの能力からして、わかりやすい正義の味方で、話の展開は「努力、友情、勝利」な少年ジャンプの世界観。三池監督は俺達のジョジョを滅茶苦茶にしちゃうだろうと思っていたら、案外、俺達のジョジョそのまんまじゃん、と。拳を振り上げてみたけれど、拳の行き場がなくなってモヤモヤする、みたいな印象を受けるフィルマークスの点数。

これは第二章、第三章と続けてもらって、拳を平手に、殴打を拍手に、変えてもらいたいなあと。自分は続編、必ず見ます。

●物語(50%×3.5):1.75
・普通に面白い。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・スペインロケ、ナイス。

●映像、音、音楽(20%×4.0):0.80
・スタンド、違和感なし。
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