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女神の見えざる手のいとJのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
アメリカ人の投票率はたいへん低い。2016年の大統領選は、56%だった。これが議員選挙になるとさらに落ちこみ、わずか30%である。そしてその30%の人たちの多くが、ロビー団体と結びついている。

主人公エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、さながらアンチ・ヒーローで、銃規制擁護の側につきつつもそのロビー活動は法と人道に反するものである。自分のキャリアのことにしか目がない、したたかな現代的人間像を見事に演じている。

演出の特徴としては、圧倒的に会話のスピードが速い。アメリカの政治システムに関する事前知識なしに観ると、面食らうほどのスピード感かもしれない。しかしこのことは、時間と金が勝敗を決める、アメリカの腐敗した政治システムを浮き彫りにする。

民主主義はどこにあるのか。ロビイストの資金力によって政治が決まり、純粋に国民のためを思うような政治家は報われない。2016年は1万1000人が銃によって死亡した。アメリカの「自由」はひとり歩きしつづけたままだ。
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