おーくら

女神の見えざる手のおーくらのネタバレレビュー・内容・結末

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

フォードは何故スローンをかばったのだろうか。それは、フォードの前でだけ、スローンが涙を流した事にヒントがあるかも知れない。
スローンは、はじめ神的あるいは悪魔的な存在として描かれていく。何もかもを見通し、目的の為にならどんな非道もいとわない。しかし、スローンは本当に全てを見通していたのだろうか。エスメを助けた男、フォードの偽証、これらは偶然が成せるものではないだろうか。そう、スローンも人間なのである。最後にスローンはキャリアよりも命の方が大事だと言い切る。スローンは常に人間に戻りたいと願っていたのである。そして、フォードはそんなスローンの人間性に触れ、スローンをかばう。スローンは自らの人間性により救われ、人間的な選択によって勝利を手にし、ロビイストである自分を葬り去り、人間へと戻っていくのである。
ラストショット、着飾る事をせず、ショルダーバッグを重たそうに持ち、眉間にしわを寄せ歩き出す彼女は、これから、人間としての自分の人生をまた一からやり直すのである。



ロビイスト、アメリカの政界、ポピュリズム、はたまた合衆国憲法や民主主義まで批判し、とてつもなく大きなテーマを扱っている映画なのにも関わらず、そのテーマの大きさを軽々と凌駕する映画の壮大さ、面白さ、奥深さ。この映画を思い出すたびに、物思いに耽ってしまうだろう。
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