140字プロレス鶴見辰吾ジラ

女神の見えざる手の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
”ゲーム”

強い女性を演じさせたら誰が良い?
強い=アクションという構図ならば
「MAD MAX 怒りのデスロード」
「アトミック・ブロンド」
でその美貌と体当たり演技をした
シャーリーズ・セロンが真っ先に思い浮かぶ。

スーパーヒーローをその身で体現した
「ワンダーウーマン」の
ガル・ガドットでも良いだろう。

しかし時代は、女性の社会で強さ
女性のしたたかさや勝利のカタルシスを欲する。
それらなば、
「ゼロ・ダーク・サーティ」
本作「女神の見えざる手」
そして期待高まる「モリーズ・ゲーム」の
ジェシカ・チャスティンを推したい。

今作はジェシカ・チャスティンのしたたかな女であり、内に燃える信念の火に真っ直ぐな女性ロビイスト役を演じており、作品自体の推進力は彼女が生み出したものと言っていよい。銃撃シーンや爆破シーン、派手なアクションとMMAスタイルの格闘術をいっさい使わずに、豪快なビッグマウスと眠ることのない野心とそして誰しもが内に秘め憧れるサイコパス的な欠落型の代代弁型の女性ヒーローとしてこの上なくキマっている。

ストーリーは、倫理委員会の審問シーンからスタートするが、現在と回想で魅せるライズ・アンド・フォール式のロマンスないしは一発逆転のカタルシス式エンターテイメントであることは予測がつく。ジェシカ・チャスティンの演技含めたパーソナル性にステータスを振りすぎているきらいもあるが、着実な前半でのスポット配置から、冒頭のヒロインであるMsスローンの語り口が、クライマックスにて感傷ムードの音楽を切り裂くように解き放たれる爽快感は、他人のやっているテトリスのようなパズルゲームの連鎖が始まった高揚感と同義である。自身が啓蒙されたように職場でのヒーロー化を想起させ、かつ知能指数が上がったように錯覚させる強い社会の異端児モノとしての体裁は文句なしに整えており、透かしと驚愕、窮地と逆転を他人の天才的ゲームプレイを見ているかのように引き込ませる術はこの手のジャンル映画としてしびれる限り。ある種、過剰なエンタメ表現で彩るラストミニッツアタックは、わかっていながら感嘆の声を漏らしてしまう。