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女神の見えざる手のハルのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
アメリカが何故、銃社会かと言うと、自分の身は自分で守るという自由が憲法で保障されているからですね。だから、国内で銃乱射事件が起きて銃規制の議論がわき起こっても、この理屈を盾に潰されてしまう。その背景には、アメリカ最強のロビイスト集団・全米ライフル協会の存在がある。ロビイストというのは、日本人には馴染みがないかもしれませんが、要するに、政治家に取り入って根回しする団体のことですね。

このお話はロビイストを主人公にした映画ですが、どちらかと言えば、銃規制を支持する側のロビイストが活躍するお話ですね。凄腕の女ロビイストが銃社会に立ち向かっていくという話ですが、面白いことに、ゴリゴリの銃社会・アメリカではあまり評判が良くないらしい。逆に日本で評価が高いのは、銃社会が日本人には異様に見えている証拠でしょう。

ジェシカ・チャスティン扮するスローン女史は、既に書いたように、凄腕のロビイストです。インドネシア政府に雇われて仕事をしてたくらいで、頭の回転が速いうえに弁の立つやり手です。勝つためには手段を選ばないところがあって、その凄まじいまでの勝利への執着から時に一線を越えてしまうこともある。正直言って、お友達にもなりたくなければ敵にも回したくない人物です。

ここまで書くと、如何にも性格が悪くて強い女に思われそうですが、薬物に頼ったり金でセックスを買ったりと弱い部分があるし、勝つことにしか興味がないように見えて実は信念を持っている。敵陣営から銃規制法案を潰そうと持ちかけられた時、「私には信念がある」とはっきり断わっているくらいですから、少なくとも、唯のゲーム感覚で動いているわけではなさそうです。決して良い人ではないし、やり口も褒められたものではないけれども、揺るぎない信念と崇高な目的を持っている点には感服します。そして、そんな人物があの手この手を使って銃社会に立ち向かっていく様子には胸のすく想いがします。

この作品の見どころは銃規制賛成派と廃案派による熾烈な頭脳戦です。あたかも、見えないチェスゲームが繰り広げられるように展開が二転三転していき、最後にはとんでもないドンデン返しが待っています。果たして、スローン女史が仕掛けた「女神の見えざる手」とは何なのか? その衝撃の切り札に誰もが息を飲むことでしょう。