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女神の見えざる手のhorahukiのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
銃規制強化を巡る、ロビイストによる水面下での攻防戦を描いたサスペンス。

これまた評判通り面白かったです♫

あらすじ…
やり手ロビイストの主人公。銃規制強化の法案に反対するロビィ活動の依頼が有力者から会社に入るも、それを断ったために上司の機嫌を損ねてしまう。そんな中、銃規制強化を推進するロビィ会社に声をかけられ、同僚数人引き連れて移籍することに。銃規制強化を巡り、元いた会社と水面下でのバトルを繰り広げるが…。

とっても面白い良作社会派サスペンス。
様々な銃による犯罪が後を絶たないアメリカで銃規制を強化すべきか否か。否定派は憲法に規定されている銃を所持する権利を主張、肯定派はテロリストが簡単に銃を手に入れられる環境を変える必要性を主張。本作見る限りは肯定派の主張が正しいように思えますね。まあ、主人公が肯定派のロビィストだし、観客を肯定派に誘導するような作りになっているので当たり前ではありますが。

でも本作が志すところは銃規制云々の話ではなく、法案が審議される際の政治における過程の腐敗。政治家の一票は、まともな議論を尽くした上での心からの正当な意見・主張としての投票ではなく、自身の政治家としての進退や様々なシガラミに囚われた忖度としての投票だということ。表舞台には現れない真の意味での「投票の動機」を可視化し、ロビイストを主人公に据えながらも、現代政治の腐敗やその要因となっているロビィ活動を否定していくというのが面白いです。

本作のラストは確かに高揚感は凄いのですが、それ以上に非常に虚しくさせられる。物事の本質ではなく、結局は表面的な印象により全てが決定されてしまうという圧倒的無力感。主人公の仕事については、銃規制の件とインドネシアに関する贈賄の件しか語られませんが、主人公は間違いなくロビイストである以前に「腐敗を正す」だったり「表面的な違法性より本質を尊ぶ」という確固たる信念・正義を持った人物だということ。確かにサイコパス的一面も持ち合わせていますが、自身の信念に裏付けられてるからこそ、この主人公が観客に受け入れられるのだと思います。もしかしたら、本当にただのヤバイ人なのかもしれませんけどね(^_^;)
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